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「野球で生きていく」の意味が変わりつつある理由 ジャパンウィンターリーグの取り組み

東洋経済オンライン / 2024年2月25日 11時40分

また「トラックマン」野球部門の責任者であるアナリストの星川太輔氏は選手たちに、こう語った。

「大事なのは『ビフォアー、アフター』です。JWLの期間中に自分がどれだけ成長したかを感覚だけではなく数字で実感してもらいたいんです。それは皆さんにとっての成果ですから、リーグとしても把握したい。このリーグでは記録したデータを隠すとか、限られた人だけに見せるとかはしません。みんなオープンにします。だから他の選手のデータを見て『すごいな』とかも思ってほしいし学んでほしい。

具体的には、投手の投球、打者の打球も『ラプソード』、スイングについてのデータはミズノの『ブラスト』で記録しています。また、配球チャートなどスコアラーの領域のデータも録っています。そういうデータを見て成長したことを知ってほしいんです」

選手たちは試合で疲れていたはずだが、セミナーの出席率は高く、熱心にメモを取っていた。

JICAと提携してアルゼンチンから派遣

さらにJWLは、JICA(独立行政法人国際協力機構)とも提携。JWLの後期日程に、JICAが野球の指導・協力をしているアルゼンチンから19歳のペドロ・アンマが派遣された。渡航費用は沖縄県内の企業が負担した。

今回の提携は、JICA沖縄事務所とのものだったが、JICAが世界各地で展開している野球普及事業と連携して、世界各地で野球をする青少年を、JWLに派遣する事業も本格的に開始する。

日本からJWLに参加したのは、社会人野球や独立リーグに在籍している選手や、フリーランスの選手など70人。しかし大学、高校に在籍する選手は参加できなかった。JWLには「プロ志望届」を出した選手しか参加できないという制約があり、ネックになっている。

また、JWLはNPBのドラフト後の11月末に始まる。NPBに行きたいという選手たちがいたとしても、翌年のドラフトまで待たなければならない。その間は、独立リーグやクラブチームなどでプレーをすることが前提になる。JWLで活躍をしたとしても、NPBやMLBへとステップアップする道は、かなり遠いのだ。

「野球で生きていく」の概念が変わる

しかしながら、JWLの設立以前から約2年、この取り組みを見てきて、筆者はそうしたエリートコースとは別の「野球で生きていく」可能性の広がりを感じている。

このリーグを運営する鷲崎一誠氏は慶應義塾大野球部の選手だったが、卒業前にアメリカのウィンターリーグであるカリフォルニアリーグに参加し、貴重な経験をするとともに、チームメイトなど多くの友人を得た。鷲崎氏はユニクロに入社するも、「ウィンターリーグを日本で始める」と言う夢を実現するために会社を辞めて起業した。

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