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政府が「物流2024年問題」をこんなにも"煽る"事情 トラックドライバーの残業規制だけではない

東洋経済オンライン / 2024年2月27日 14時0分

「物流2024年問題」の本質とは何か(写真:まちゃー/PIXTA)

トラックドライバーの労働時間に上限規制が2024年4月から導入されると、人手不足によってモノが運べなくなるーー。「物流2024年問題」は、たんなるトラックドライバーの残業問題と捉えられることが多いが、そこだけに焦点を当てると本質をつかむことはできない。

【図表】歪んだ業界構造を「放置」しておくとどうなるか

政府が物流問題を「たきつける」ワケ

そもそも、2024年問題は、トラックドライバーの人手不足問題とは毛色が異なる。トラックドライバーは、「労働時間が2割長いのに、収入は2割低い」と言われ、労働条件の課題が指摘されてきた。

そうした運送業界が抱えてきた構造的な課題に、少子高齢化による就労可能人口の減少という構造的課題が加わって発生したのが、トラックドライバー不足である。

一方、2024年問題は、厚生労働省が主管となる「働き方改革関連法」という政策が引き起こした問題だ。これに、経済産業省や、国土交通省、農林水産省が荷主事業者や物流事業者が早急に取り組むべきことについてまとめガイドラインを出すなどしている。これによって政府は何をなし得ようとしているのか。

結論から言えば、2024年問題の本質的な定義は、「少子高齢化の進行によって、就労可能人口が減少する将来の日本社会においても、『産業の血液』と呼ばれ、私たちの生活に欠くことができないインフラである物流を維持継続するための荒療治」である。

運送業界の歪みは、1990年に実施された規制緩和によって、1996年には4.9万社弱だった運送会社が、わずか4年で6万社強まで増えてしまったことから始まった。

運ぶべき荷物が増えたわけではない。にもかかわらず、短期間で運送会社が約1.5倍に増えた結果、運送業界には過当競争が発生し、運送会社と荷主のパワーバランスが大きく崩れてしまった。運送会社は仕事欲しさに、荷主の過剰要求をのまざるを得ない状況へと陥ったのだ。

荷主は、この「荷主優位」の状況を利用し、主に2つの怠慢を行った。

• 運送プロセスのムリやムダを見直すような本質的な改善を行わず、運賃の買い叩きを行うことで、運送コスト削減を行った。

• 荷物を受け取る側の着荷主のワガママ(時間指定や自主荷役など)をそのまま運送会社(=トラックドライバー)に押し付けることで、顧客満足度の向上を図った。

その結果、トラックドライバーの労働時間は長時間化し、逆に運送ビジネスの利益率は悪化した。当然、トラックドライバーの収入も減り、「労働時間が2割長いのに、収入は2割低い」状態に陥ったのだ。これではトラックドライバーの成り手が減るのも仕方ない。

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