1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

政府が「物流2024年問題」をこんなにも"煽る"事情 トラックドライバーの残業規制だけではない

東洋経済オンライン / 2024年2月27日 14時0分

こうした中、岸田政権は、2023年3月31日に、「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」を立ち上げ、同年6月に「物流革新に向けた政策パッケージ」、同年10月に「物流革新緊急パッケージ」を発表した。今年1月から始まった通常国会では、「物流革新」政策に基づく施策の法制化を進めている。

「物流革新に向けた政策パッケージ」では具体的な施策として24項目、「物流革新緊急パッケージ」では13項目を挙げている。

中でも、政府がもっとも期待しているのが、「積載効率の向上」である。現在の積載効率は約38%。すなわちこれは、「トラックの1/3は空気を運んでいる」状態だが、政府は2030年度までに、積載効率を16%以上向上させることを目指している。

次に大きな効果を見込んでいるのが、「荷待ち・荷役の削減」。荷待ちは、荷物の積み卸しのために待機する時間、荷役は荷物の積み卸し作業のための時間を指す。現在、1日の運行で平均3時間程度発生している「荷待ち・荷役時間」を2時間以内に制限する「2時間以内ルール」を制定し、2時間を超えた場合には、待機料金・荷役料金の割増率を5割とする対策を盛り込んだ。

こうした複数の取り組みによって下表の通り輸送ポイントを14.3ポイント(=トラックドライバー14.3万人相当)を改善できるとしている(すなわち、今年度における2024年問題は回避は可能になる)。

2024年問題は、運送会社と荷主および元請け大手物流事業者それぞれの役割を明確にした。

• 運送会社は、経営を健全化し、トラックドライバーの待遇(収入や労働時間など)を向上させること。

• 荷主および元請け大手物流事業者は、運賃改善を含め物流全般の構造的な改善に責任を持つこと。

消費者も変わらなければならない

問題解決には消費者の行動変容も必要である。

例えば、これまで食品物流には、「1/3ルール」「1/2ルール」なるものが存在した。これは、食品は、製造日から消費・賞味費期限のうち、1/3ないし1/2のリードタイムで小売店に納品しなければならないという商慣習であり、これが食品を取り扱う倉庫会社や運送会社の大きな負担となっていた。

政府はこうしたルールの廃止を明言しているが、これによってスーパーには消費・賞味期限が短い商品が増える可能性もあるだろう。

実際、大手コンビニエンスストアチェーンでは、これまで1日3回実施していた店舗配送を2回に変更した。結果、筆者の肌感ではあるが、「最近、おにぎりや弁当などが売り切れている時間が長くなったな」と感じることが、このコンビニでは増えてきている。

これは運送会社・倉庫会社といった物流事業者の怠慢ではない。これまで無理強いをしてトラックドライバーなどに過度な負担を掛けてきた反省を踏まえ、便利になりすぎた世の中を適正なあり方に修正しようというものなのだ。

健全な物流なくして、もはや私たちの生活は成立しない。だからこそ、2024年問題を正しく理解し、正しく恐れ、そして消費者も含めて正しく対策を講じることが求められる。

坂田 良平:物流ジャーナリスト、Pavism代表

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください