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霊能者の予言「当たっている」と思うカラクリ インチキに惑わされるのは企業の偉い人も同じ

東洋経済オンライン / 2024年2月28日 10時30分

頭のいい人が、なぜこれほど「うまい話」にのせられてしまうのか(写真:perfecta/PIXTA)

ビジネススクールで分析されるのは、グーグルやアマゾンのような成功企業の戦略がほとんどだ。多くの経営者も注目し、自社に導入しようとしているが、そうした表面的な成功体験だけを真似しても、うまくはいかない。ビジネスの成功事例を当てにするのは、霊能者の予言をありがたがるのと同じともいえる。

これに対して「見えないゴリラ実験」でイグ・ノーベル賞を受賞した心理学者のダニエル・シモンズ氏が、同じく心理学者のクリストファー・チャブリス氏とともに著した最新作『全員“カモ”』で提示するのは、「失敗と向き合うことの重要性」だ。人間の認知能力の脆弱性を知ったうえで、理性的な判断を心がけるためにも、このポイントを押さえておきたい。

カジュアルシューズ・ブランド復活の謎

ビジネスの世界では、長期的に業績を挙げている企業に注目し、これらの企業に共通する特徴を見つけようとする手法が古くから用いられてきた。ビジネススクールでは、成功した企業やリーダー、意思決定の事例を分析することがカリキュラムの中心になっている。しかし、このやり方は、生還した爆撃機だけを分析対象にするのと同じことだ。

【写真を見る】「見えないゴリラ実験」で有名な著者による人心操作に関する本

その典型例が、作家マルコム・グラッドウェルのベストセラー『ティッピング・ポイント』(飛鳥新社)の冒頭に出てくるエピソードだ。

グラッドウェルは、カジュアルシューズ・ブランドの「ハッシュパピー」が、1994年まで低迷していたが、ニューヨークのサブカルチャーの発信源である流行に敏感なインフルエンサーたちに支持され始めたことで突然大流行し、1993年から1995年にかけての年間売り上げが3万足から43万足に跳ね上がったと記している。

企業が自社ブランドを宣伝するために「インフルエンサー」を活用する可能性を示す好例とされているのだ。

確かに、他よりも大きな影響力を持つ消費者はいるが、少数のインフルエンサーに製品を提供し、それを大衆に向けて宣伝してもらえば、マーケティングは必ず成功するのだろうか?

実際には、ハッシュパピーの事例は「流行の最先端を行く人たちに履いてもらえばシューズ・ブランドは急成長する」や、「インフルエンサーを起用することが企業の成功の秘訣である」といった考えを裏づける証拠を何も示していない。成功の原因を見極めるためには、1つの分かりやすい要素だけではなく、あらゆる要素を考慮しなければならない。

集中力が併せ持つメリットとデメリット

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