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推薦入試が5割で「一般入試枠が減少」へのギモン 何歳からでも大学で学べる機会が減る危機

東洋経済オンライン / 2024年2月29日 11時0分

まず、筆者の周囲の一般入試経験者は、推薦入試の増加についてどう思っているのか。

20代、30代、40代、50代と各世代の一般入試を経験した4人にたずねてみたところ、「推薦入試自体を否定するわけではないが、増加については反対」「推薦を増やすのであれば、多くが現役生対象なので、現役生以外の入試も同時に増やすべき」「多様性を大事にする世の中でありながら、大学入学の門戸を狭めると思うので、反対」「推薦でとにかく入れればいい、と思っており、本当に将来のことまで考えているか疑問」などの声があがった。

上記の意見からも推察できるように、推薦入試への批判はいくつかのパターンがある。

「生徒の学力を担保できない」、「採点基準が不明確」などに加えて、近年とりわけよく聞かれるのが「志望理由書や面接で必要な経験はお金で購入できるため、富裕層が断然有利になる」という金銭面の格差の拡大を懸念する類の意見である。

現状推薦入試は、大学進学の経済格差をさらに助長するのではないかという見方が多い。しかし、この考え方は実際のところは正しいのだろうか。

実は、近年では研究が進み、入試改革が入学者の格差是正につながっている可能性を示すデータもいくつか示されてきている。

例えば、ベネッセ教育総合研究所の木村治生氏は、2023年6月の日本子ども社会学会において、東大社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所の共同調査の結果を発表した。

そこでは父親・母親が大学を出ていない家庭の生徒ほど、推薦入試を用いて大学に進学しており、推薦は、個人・家庭の状況を収入や職業・教育の状況からとらえる「社会経済的地位」が低い層が難関大に進学するルートになっている可能性を指摘した。

また、この調査では一般入試よりも推薦入試を使用した人のほうが、年収が低い家庭から難易度の高い大学に通える可能性が高くなっていることも示されている。

現在、「低所得・非大卒家庭の一発逆転の手段」としては、むしろ一般よりも、推薦のほうが有利に働いているかもしれないという可能性もあるのだ。

文科省の大学入学者選抜実施要綱にも、「各大学は、年齢、性別、国籍、家庭環境等に関して多様な背景を持った学生の受入れに配慮する」という基本方針があるが、選抜入試の推進が「生まれ」で決まってしまう格差を是正する狙いもあるのだとすれば、問題視される入学者の学力面や採点基準などの不平等もむしろ、不利な環境にいる人たちのためには、ある程度は仕方がないと捉えることもできるだろう。

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