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推薦入試が5割で「一般入試枠が減少」へのギモン 何歳からでも大学で学べる機会が減る危機

東洋経済オンライン / 2024年2月29日 11時0分

推薦入試は同じ手段で平等に選抜する「試験の公平性」よりも環境格差・貧困格差を縮める「教育の公平性」から判断した場合、実際に一定の成果を上げているとも考えられるのだ。

過年度生・再受験生はどうなるのか

しかし、このまま「教育の公平性」を大義名分として推薦入試を推し進めていった場合、確実に切り捨ててしまう人たちがいる。それは、20歳を超えてから初めて大学に入る、もしくは入り直す過年度生・再受験生の存在だ。

文部科学省は施策の1つとして「誰もがいくつになっても学び直し、活躍することができる社会の実現」を目指している。

一方で、旧帝国大学や早稲田大学・慶應義塾大学など難関私大で実施される現在の推薦入試は、そのほとんどが現役・もしくは1浪の年齢までしか出願できない。現在は出願年齢に制限がない東京大学でさえ、出願資格を2025年の入試から高校卒業後1年までに限定することを発表した。

推薦入試の増加は、一般入試の選抜枠が狭まることも意味する。出願年齢が限られた選抜方式が増えると必然的に、年を取ってから大学に入る人たちの枠が減ることも避けられないだろう。

このように理念と行動が逆方向を向いている現状は、国のめざす「生涯学習社会」の実現からはほど遠い。以上の理由で、筆者は、推薦入試のこれ以上の拡大には反対である。

筆者は家族に大卒者のいない年収200万円の家庭から、偏差値40の商業高校に進学した。高校を出てから自分の人生を挽回したいと思い、正社員として受験費用を貯めながら9年間受験勉強を続けたが、親族から「大学なんか行く意味ない」という批判を受け続けた。

勉強を教える場としての地元予備校でも、「勉強なんて参考書を暗記すれば何でもできる」という受験への解像度が低い情報しか入ってこなかった。

一般入試で救われる層の受け入れが減る

そんな大学受験に非協力的で、情報が入らない環境にいた人間でも、今までなら過去問を入手して演習を重ねることでカバーできた。ノウハウが何もなくても、何年分、何十年分とやりこむことで、大学が求めている知識や能力を理解でき、都会の同級生と同じ土俵に立てたからだ。こうして私は早稲田大学の過去問を80年分解いて、27歳で入学した。

「そんな年齢で大学に入ったところで就職できないからもったいない」と思う人も多いだろう。たしかに私自身、「新卒一括採用」の仕組みが根強い日本では大手企業に就職をすることこそ難しかった。しかし、「教育関係」という進みたい道が定まっていたので、大学の環境に再チャレンジの機会は十分に与えてもらえたと思っている。

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