「もうトラックは降りる」運転手たちが語る辛さ 「2024年問題」対策への現場の強烈な違和感
東洋経済オンライン / 2024年2月29日 13時0分
しかし、ブルーカラーワーカーによる副業はそれほど単純ではない。体を使いながらも安全が最優先される彼らには、「体を休めること」も仕事の1つだからだ。
1人で黙々と道路をひた走る仕事は、ただでさえ眠くなる。副業による疲労蓄積、睡眠不足は、ドライバー本人だけでなく、周囲のドライバーの命をも危険に晒すおそれもある。副業を禁止している運送事業者の多くがその理由として挙げるのも、やはりこの「安全上の理由」だ。
しかし、ただでさえ全産業の平均より約2割収入が低いドライバーにとって、労働時間が減るということはもはや死活問題。「副業できないならば」と転職や退職を考えざるを得ないケースもあるのだ。
トラックを降りる理由で「稼げない」の次に多いのが、「規制ばかりで魅力を感じなくなった」という声だ。実は、現役のトラックドライバーたちには「トラック職による長時間労働は苦ではない」とする人が少なくない。
その理由は他でもない、何よりトラックの運転が好きだからだ。
長い場合だと1週間以上、車内での寝食生活を送るトラックドライバー職は、全国各地の絶景絶品を楽しみながら1人走れる「旅仕事」だ。しがらみなく仕事がしたいクルマ好きには、まさに天職である。
何より、かつてのトラックドライバー職は「3年走れば家が建ち5年走れば墓が建つ」とまで言われるほど、きつくても走った分だけ稼げる「ブルーカラーの花形業」だった。業界も、「仕事はキツいが走った分だけ稼げる」を最大の“強み”として人材を集めてきたのだ。
「過酷」で「稼げない」職業になったきっかけ
そんな業界を一変させた大きなきっかけがある。1990年の物流2法における「規制緩和」だ。
これにより業界に新規参入しやすくなったことで、それまで4万社ほどだった運送事業者が6万3000社に急増。多重下請構造ができあがったうえ、翌年にはバブルが崩壊。熾烈な荷物の奪い合いが起きた。
労働集約型産業である業界は、運賃を下げ、検品や仕分け、棚入れなどの付帯作業を「おまけ仕事」として提供することで、競合他社との差別化を図るようになり、結果、これまで以上に過酷なのに稼げなくなったのだ。
その当時、「稼ぎたい」とトラックに乗り始めた若手ドライバーは、現在50代。大型トラックドライバーの平均年齢も、現在約50歳だ。若いころ「ひとりしがらみなくガッツリ稼ぎたい」と入ってきた彼らから「もっと走りたい」や「しがらみだらけ」、「稼げないなら辞める」という声が出ることは何ら不思議ではないのである。
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