不正が「優良企業」で起こってしまう意外な理由 「強い文化」のメリットとデメリットとは
東洋経済オンライン / 2024年3月1日 14時0分
不正、不正、不正……。今や、不正は悪しき日本文化になってしまったようだ。ビッグモーターと不正の片棒を担いだ損保ジャパンのような国内市場依存度が高い企業に留まらない。
日本を代表するグローバル企業においても不正の嵐が吹き荒れる。不正会計がきっかけで苦境に陥り、非上場企業になってしまった東芝。日野自動車に続き、デンソー、ダイハツ、豊田自動織機などで認証試験不正が相次いで発覚したトヨタグループ。大恥をさらしてしまった。
時を同じくして、富士通は欠陥会計システムを提供していたことで、900人以上の郵便局長らが横領や不正経理の無実の罪を着せられた「イギリス史上最大の冤罪事件」が起こった。これらの不祥事は、一企業の問題に留まらず、「Japanブランド」の棄損につながる。
「強いリーダーシップ」で不正の温床払拭できる?
世界における日本の存在感が低下し続ける中、信頼性が低下すれば、日本経済全体に及ぼす影響は甚大だ。これほど重大な問題になっても、不正発覚後の謝罪会見で多くのトップは「組織(企業)文化に原因があった」と、とりあえず弁明し、当面の改革案を提示するだけ。
メディアも「強いリーダーシップで組織改革を」といった論を展開しているところが多い。はたして、その程度の認識で不正の温床を一掃できるのだろうか。
日本の庶民は昔から「お上」の目をごまかすため、さまざまな工夫をしてきた。それは、法を犯すのではなく、法の網を抜けるすれすれの離れ業で対応してきた。
会社でもそれは変わらない。子会社のトップは親会社のトップに、役員は社長に、中間管理職は役員に、一般従業員(正社員・非正規雇用社員)は中間管理職に、下請け中小企業は得意先の大企業に対して、法の抜け道を利用して機嫌を取る方法を考えてきた。
こんな話がある。
ある経営破綻した大企業のトップは、自社の急変に驚きを隠せず、財務担当役員に思わずこういった。「どうしてこんなことになってしまったんだ?」。
実はこの役員、つねづね「CEOの喜んでいる顔を見るとほっとします」と微笑みながら話していた。CEOのご機嫌を損ねず、その場さえ凌げば役員報酬を得られる。その期間をできるだけ延ばし、高額の退職金を手にして逃げ切るには、悪い実態は隠蔽してでも、CEOに喜んでもらうことが重要なのだ。
しかし、この考え、行動は極めてグレーゾーンである。近年起こっている不正事件は、法の網をうまく潜り抜けようとして、法に触れてしまった例が多い。グレーゾーンに不条理を感じている人は少なくないだろうが、告発するにも「仕返し」される可能性を考慮しなければならなかった。
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