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不正が「優良企業」で起こってしまう意外な理由 「強い文化」のメリットとデメリットとは

東洋経済オンライン / 2024年3月1日 14時0分

最近、不正行為が社会問題化した企業は「強い文化」のタイプは違えど、強いリーダーが支配していた。実態は従業員が面従腹背を決め込み、「強い文化」のデメリットが生じたことは否めない事実だ。

トヨタ自動車が「トヨタイムズ」というオウンドメディア(Owned Media)を駆使した広報戦略を展開し始めて以来、豊田章男会長の存在感は好業績も伴い急速に高まった。子供でもテレビで見た「トヨタの偉い人」と分かるようになった。今は、そのバトンを佐藤恒治社長が受け継いだ形だ。これは、顔の見える会長や社長を担ぎ出すトップ広報の常套手段である。

皮肉な見方をすれば、豊田氏が専制国家の「ドン」に映る。「トヨタイムズ」は国家(企業)ぐるみの国営放送や政府系新聞のプロパガンダに見えなくもない。しかし、そこには、強いリーダーのデメリットも見え隠れすることをお忘れなく。

東芝では、西室泰三氏、西田厚聰氏、佐々木則夫氏など、キャラが濃い「強く見えるリーダー」は達成困難な目標を設定し、過度な焦燥感を社員に与えた。ビッグモーターと損保ジャパンも強い(傲慢な)リーダーの「圧」が強すぎ、現場の苦言が届かぬ「お上」になっていたのではないか。トヨタグループも然りである。

「恐怖心、恥をかきたくない気持ち」が不正に

非上場企業・東芝の初代社長になった島田太郎氏は、昭和・平成型の強いリーダーには見えない。論理的に話すが、どこかひょうひょうとした雰囲気が伝わってくる。かつての東芝の社長とは明らかに異なるタイプだ。

島田社長に「ご自身も含めてコンプライアンスについてどのように考えていますか」と質問したところ、次のように答えた。

「恐怖心、恥をかきたくないという気持ちから不正が起こるのではないでしょうか。責任感が強い人ほど何とかしようと考えます。それがあたかも美談のように語られてきました。そんなのは美談ではありません。問題になっている課題事項や、間違いが生じたら、すぐに伝えてほしいと社員の方々にお願いしています。私にも直接(社内)メールをくださいます。そのたびに、私は、ありがとうございます、と一言添えメッセージを返信しています。間違いを叱責するのではなく、これからどうするか、と社員1人ひとりが思うことが大切です。私自身もそうしています」

アメリカで、大量リコールで辛酸をなめた豊田章男社長(当時)は、その経験を生かし、トヨタグループの陣頭指揮を執り、責任者として組織の変革をリードする、と宣言した。強いリーダーがより強いリーダーになり、改革が成功すれば、トヨタの「強い(組織)文化」がさらに強くなる。そこに死角はないか。

長田 貴仁:流通科学大学特任教授、事業構想大学院大学客員教授

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