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不正が「優良企業」で起こってしまう意外な理由 「強い文化」のメリットとデメリットとは

東洋経済オンライン / 2024年3月1日 14時0分

とはいえ、ダイバーシティ、コンプライアンス、心理的安全性、人的資本経営が叫ばれている時代である。報復人事をしてしまえば、メディアからもバッシングされる。人手不足の時代、若い社員のご機嫌を損なわないように、という流れは顕著。内部通報制度が当たり前の仕組みになっていることを思えば、ひと昔前に比べれば、従業員は守られるようになってきたと言えよう。

「強いリーダー」が生まれやすい組織文化とは

ここで、強い組織文化の死角について経営学の理論に基づき説明しておきたい。

タイプは違っても、強いリーダーは強い組織文化を持つ企業から生まれやすい。創業者および創業の歴史が偉大であればあるほど、強いリーダーはそれを、強い組織文化として利用しようとする。どこか、伝統的宗教が紆余曲折し、ときの権力者に政治利用されてきた歴史と重なり合う。

『エクセレント・カンパニー』(トム・ピーターズ、ロバート・ウォータマン著/大前研一訳/英治出版)という著書を読まれた方は多いだろう。2人の経営コンサルタントが著したこのオリジナル本は1982年に出版され、世界的ベストセラーとなった。

同書は超優良企業の8条件として、①行動の重視、②顧客に密着する、③自主性と企業家精神、④人を通じての生産性向上、⑤価値観に基づく実践、⑥基軸から離れない、⑦単純な組織・小さな本社、⑧厳しさと緩やかさの両面を有する、などを抽出し一般化している。そして、そのベースには「強い文化」があると強調した。

たしかに、強い文化を持つ企業には、主に4つのメリットがある。

① 従業員が「適切でない行動」を自覚することにより、常に監視するモニタリング・コストを低減でき、従業員の自発的行動を促す。

② 現場の臨機応変な対応が可能になる。

③ 価値観を共有することで、仕事に意味を見出し、従業員のモチベ―ションが向上する。

④ 阿吽の呼吸とも言える言葉にせずとも分かる暗黙知が形成され、細かな指示が減る。

一見、良いこと尽くめに思える「強い文化」だがデメリットもある。経営学の先行研究で共通している批判は次の3つだ。

① 自社の常識が他社、世間の非常識になりかねない思考の均質化。

② リーダーの言動が絶対的になり、従業員が盲従する独裁専制国家型組織に陥る。

③ 強い文化がマンネリ化することで、従業員が冷めてくる効果の非持続性。

「強い文化」は短期業績との関係しかない

これらの強い文化のデメリットを裏付けるかのように、『エクセレント・カンパニー』で取り上げられた企業の3分の1が1978年から1982年の間に大幅に業績を落としている。その後の経営学の研究では、強い文化は、短期業績との関係しかないことが実証されている。

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