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認知症の母が同じものを何度も買ってしまうワケ 認知症の「なぜ?」がわかり、介護が楽になる

東洋経済オンライン / 2024年3月2日 19時0分

と言うと、これに藤田さんは大笑い。私もつられて大笑い。

意味のある情報を交換しているわけでもなく、「ノリ」で言葉が交わされているだけ。でもその場の雰囲気は、どっと一緒に笑ったことで、明るく、前向きにまとまります。

自分の言葉を否定せずに受け止め、面白おかしく返してくれた普通の会話がうれしいという感覚は、認知症の有無は問わないのです。

冗談でもいいので、とにかく笑いをどんどんつくっていく。

これは、あらゆるシーンで使える大切な鉄則です。

「愛のあるツッコミ」は家族にしかできない

普段はとてもほがらかな、認知症の井上さん(81歳)。

明るい性格とはいえ、生活の中で記憶の苦手を強く感じるようになった自分と向き合うのは、精神的にこたえるといいます。

話をしていると、「若っかときは、ピシャッとできとったばってん、たいぎゃあ苦手になったばい……」と本音を漏らし、ときに涙を流されることも。

このような、わずかな刺激で感情があふれてしまい、自覚しても抑えることができない状態を、医学的には「感情失禁」と呼びます。

感情失禁に対しては、本人と同じ態度、表情で接するのが基本です。

私も顔をしかめて、「そうですか。苦手を感じるんですね……」とアプローチします。

そこに、ご本人以上に明るい性格の奥さんが入ってきました。

そして、あいさつもつかの間、さらっとこう言ったのです。

「ばってん、あんた。今始まったことじゃなかばい。若いときから、よう忘れよったもん! だけん、なにも変わらんと。支え合って生きていけばよかと」

とたんに空気がパッと明るく晴れ上がりました。

井上さんも「また、お前ばバカ話ばっかりして」と言い返しながらも笑っています。

正直、こうした切り返し(あるいはツッコミ)は、私たち専門職にはなかなか発せない言葉です。

その機転の良さは、反対に私たちが学ばなければならないところでもあります。

記憶の喪失だけでなく、認知症になると失敗が増えていきます。

そこで叱ったり、あきらめたりせずに、前向きな笑いを交ぜ、ネガティブな雰囲気を変えるちょっとした工夫をしてみてください。

たとえば、ボタンやチャックを閉められずに、うまく服が着られない方の場合。

わざと自分もチャックを下ろして、「あらっ、私もチャックが開いていました」と笑いながら言うことがあります。

同じ立場を演出した後に動きを見せながら、「こうやって閉めるといいですね」と、チャックやボタンの動作を解決する。

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