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エンタメ公演トラブル「金返せ」はどこまで可能か 帝劇「ジョジョ」の公演中止で気になる返金の条件

東洋経済オンライン / 2024年3月4日 7時50分

ここ10年ほどでも大きな事故が起きている。2017年10月に新橋演舞場での「スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース」に出演していた市川猿之助が花道にある“すっぽん”と呼ばれるセリで姿を消す瞬間に衣装の左袖が装置に巻き込まれ、骨が皮膚を突き破る左腕開放骨折の重傷を負った。2012年8月には市川染五郎(現・松本幸四郎)が国立劇場での舞踊公演中にセリから約3メートル下の奈落に転落し、右側頭部等を強打した。かなり出血し、最悪の事態を覚悟したほどだったという。

「ジョジョ」の演出上の問題については明らかではないが、公演中に人身事故でもあれば取り返しはつかない。準備不足はお粗末であるが、その社会的批判や交通費・宿泊費を含む金銭的な補償を覚悟しての東宝の中止の決断は評価してよいだろう。

ほかに返金されたケースとは

一般に興行の中止等での返金条件はどのようなものなのだろうか。通常は、観劇券の裏に書いてある規約(約款)では公演の中止の場合のみ返金し、その他の場合は、配役や演出の変更等があった場合も含めて一切返金しないとしている。これについて実際のケースをみてみよう。

最近では2023年10月の水戸での山崎まさよしのコンサートで、山崎が「今日はあまり歌いたくない」などと言って、長話を続け、数曲しか歌わなかったことで観客のクレームが殺到し、所属事務所が返金対応をした事例がある。法律的な契約論でいえば、山崎のこうした態度が「債務不履行」(契約上の約束を果たさないこと)に該当するか否かだが、同事務所は「当初予定していた内容と異なる公演」になったとして返金を行った。

筆者自身の経験だが、2023年の明治座創業150年記念の公演で2回トラブルに遭遇した。1回目は、5月の市川猿之助奮闘歌舞伎公演だ。メディアを騒がせた猿之助自殺未遂事件での主役の突然の降板だ。

夜の部・「御贔屓繫馬」(ごひいきつなぎうま)は事件当日から中村隼人が代役を務めた。隼人は公演日程終盤に猿之助に代わって主役を務める予定だったため素早い対応が可能だった。昼の部・歌舞伎スペクタクル「不死鳥よ 波濤を越えて―平家物語異聞―」はわずか事件日の2日後から猿之助の甥にあたる市川團子が主役・平知盛を演じた。

公演が代役で開演された場合は、規約上は返金されないが、さすがに「猿之助奮闘歌舞伎公演」で猿之助が出演しないことは問題と考えたのであろう。明治座は希望者への返金に応じた。ただし、当日に代役を務めた隼人、19歳の若さで47歳のベテラン猿之助の代役をわずかの稽古期間で務めた團子に注目が集まり、むしろ観客が殺到した。

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