西友、脱「ウォルマート」システム全面刷新の裏側 スーパーでは異例、わずか3年で全面刷新を断行
東洋経済オンライン / 2024年3月4日 8時0分
EC業界では浸透している手法だが、日系のスーパーでは珍しい。「店舗の運営に影響が出ることはあってはならない」という意識が根強く残るからだ。スーパーの営業部や商品部にとって、冒頭のような品切れが起きることはタブー。システムの更改にあたっては、「通常の営業に支障をきたさないこと」が何よりも優先される。
マネジメント層が積極関与
しかし、今回は時間がない。西友は期限を守るためにリスクをとる必要があった。そこで今回のプロジェクトでは大久保恒夫社長以下、マネジメント層が積極的に関与。「とにかくシステム移行を最優先」という全社的な方針を打ち出した。移行作業がピークを迎える昨年秋以降は、システムに負荷がかかる棚割の変更や広告宣伝を徹底的に簡素化させ、DXのメンバーが作業に集中しやすい環境を整えた。
冒頭のような一部欠品は生じたものの、当初懸念していた営業停止など大きな問題は起こらなかった。そうして昨年末、パートナーであるベンダー各社に「絶対無理」とまで言われたプロジェクト、3年間でのシステム「脱ウォルマート」化を完了した。
荒木氏は今回のプロジェクトを次のように振り返る。
「小売業が求めるシステムの品質はかなり高いうえ、業界では完成品の納品を待つ開発手法が主流だ。だが一方で、開発期間が長期化することも多く、追加費用の発生でシステムベンダー側がもうかる構図になっている。変化の激しい現代、小売業はもっと大切なことに資源をかけるべき。今回のプロジェクトはいい事例の一つとなるかもしれない」
重要なのはこれを機に西友がどう変わるかだ。
西友は北海道から熊本県まで店舗網を持つ。楽天とは資本関係は解消したものの、協業を続けており、同社の会員情報にもアクセスできる。本来、これらから得られるデータは、マーケティングや商品の最適化に強力な武器となるはず。西友自身も2025年12月期までの中期経営計画の柱として、データ活用の強化を掲げている。
ただこれまでは、データを十分生かし切れていなかった。執行役員の武田正樹経営企画本部長は、「売れ筋商品の好調要因や特定店舗の売り上げが振るわない理由をデータから分析しようとしても、レポート作成だけで2週間程度かかるのが常だった」と明かす。
その原因こそが既存システムの複雑さだった。ウォルマートのシステムは世界最新鋭とはいえ、ビジネスモデルや市場環境が大きく異なる日本のスーパーマーケットには必ずしも最適化されていない。
この記事に関連するニュース
-
肉のハナマサ、スーパー玉出。東西の2大“ローカルスーパー”が異例の提携。大量閉店、暴力団関与…「挫折からの再起の行方」は
日刊SPA! / 2024年7月5日 8時53分
-
ランサムウェア被害で延期のイズミ本決算がついに発表、西友九州事業取得のねらいは?
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年7月2日 20時59分
-
日立建機、全社デジタル・トランスフォーメーションを支援する大規模基幹システム基盤をOracle Cloud Infrastructureで刷新
PR TIMES / 2024年6月28日 13時45分
-
サイバー攻撃渦中のニコニコがAWSのイベントで講演 動画の配信基盤について解説、観客から拍手の一幕も
ITmedia NEWS / 2024年6月25日 7時55分
-
業界トップクラスの営業利益率を達成した西友の次の一手は?
食品新聞 / 2024年6月13日 18時40分
ランキング
-
1「楽天ブラックカード」これまで招待のみだったが、申込受付を開始 特典は?
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月5日 13時7分
-
2株高なのに円安の恩恵が広がらないのはなぜか 岸田政権の大きな政策ミスを教訓にできるか
東洋経済オンライン / 2024年7月6日 9時0分
-
3愛・地球博から約20年“夢の道路の続き”ついに動く 「名古屋瀬戸道路の“側道”」東名の南側へ
乗りものニュース / 2024年7月6日 8時12分
-
4ラーメン業界の革命児「一蘭」幹部に聞く 最高益をたたき出した「3つの要因」
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月6日 11時25分
-
5知っていたらもっと早く仕事を変えたのに…65歳以上も働き続けることで減額されてしまう「年金の落とし穴」
プレジデントオンライン / 2024年7月5日 9時15分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)