「敵に塩」は若者には難しい?"伝わらない"日本語 「新聞にもよく使われる」史実・故事由来の表現
東洋経済オンライン / 2024年3月5日 9時0分
スマホ社会の現代日本。
若者たちは黙々と動画やゲームの画面と向かい合い、用事は絵文字を含む超短文メールを素早く打つばかり。
時間を割いて他人と会って話すのは「タイパが悪い」とすら言う彼らと、「生きた」日本語の距離がいま、信じられないくらい離れたものになっています。
言い換えるならそれは、年配者との間の大きなコミュニケーションの溝。
「日本人なのになぜか日本語が通じない」という笑えない状況は、もはや見過ごせませんが、「その日本人同士と思うところが盲点」と、話すのは、言語学者の山口謡司氏。
『じつは伝わっていない日本語大図鑑』と題された一冊には、日本人ならハッとする指摘が満載。
その中から、会話が通じない「落とし穴」になりがちな日本語の興味深い例を紹介してみましょう。
言葉の理解は、歴史・文化を知ってこそ
日本語は、本当にもののたとえが上手です。
●「赤子の手をひねるように」→簡単な
●「奥歯にモノが挟まったように」→言いたいことを素直に言わない
●「芋を洗うような」→すごい混雑ぶり
●「絵に描いた餅のように」→実現不可能な
●「腫れ物に触るような」→緊張感をもって慎重に
……などなど。
(※各言い回しの詳しい説明は、記事の最後に)
これらは、頭に何となく具体的なイメージが浮かびますから、若い人であっても、比較的容易に意味をつかむことができると思います。
けれども、ウクライナ戦争に関して、先ごろ出された次のような新聞記事についてはどうでしょう。
単純なイメージをふくらませたところで理解に至らないある比喩の言い回しが添えられていました。
それは、ロシアがますます侵攻して、欧州有数の岩塩鉱があるウクライナ東部のソレダルという土地を占領したというもの。
そこから採れる良質な塩は、ウクライナ人にとっては「国民の誇り」にほかならず、まさにウクライナ人の命のもとだったそう。
やむなくウクライナはアフリカから塩を買わざるをえない窮状に追い込まれてしまった――。
一方、もともと塩の輸入国だったロシアは一転して、塩の大量保有国に。
こうした状況を伝えた最後に書かれていたのが、この結び文です。
「塩の純輸入国だったロシアは生産量が増えたが、敵に塩を送る気配はなさそうだ」(読売新聞2024年2月7日付)
意外にも歴史をもとにできている言葉は多い
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