「半導体のプロ」坂本幸雄氏はなぜ中国に賭けたか 「いずれ中国のIC微細化は限界迎える」と予見
東洋経済オンライン / 2024年3月5日 7時50分
日本の半導体業界では珍しい「プロ経営者」だった坂本幸雄氏が2月14日に死去した。日本テキサス・インスツルメンツ(TI)副社長などを経て、エルピーダメモリ(現マイクロンメモリジャパン)を一時的とはいえメモリーの世界大手に導いた手腕は広く知られている。
【画像】2013年、マイクロンによるエルピーダ買収の会見に臨んだ坂本氏
2012年にエルピーダが経営破綻した後は表舞台から遠ざかったが、死去するまで中国の半導体メーカーで経営者としての復権を目指していた。
「日本企業が日本メディアの報道をうのみにして、中国との交流を避けるのはよくない」。坂本氏は2023年7月、深圳市昇維旭技術(スウェイシュア)最高戦略責任者(CSO)の肩書で、筆者が勤務する桜美林大学で講演した。同社はメモリーの一種であるDRAMへの参入を目指す中国の国有企業で、坂本氏は2022年6月に入社していた。
坂本氏は取材や講演で持論を述べるのが好きだったが、スウェイシュアへの入社以降は控えていた。中国のハイテク産業を警戒する日本の世論を意識していたようだ。しかし、前職の記者時代から20年以上の交流がある筆者が依頼すると、「学生さんが相手なら」と快諾してもらった。
結局は当日、メディア批判を含めて以前と変わらぬ毒舌ぶりを発揮し、筆者は苦笑してしまった。キャンパス前でタクシーに乗る姿を見送ったのが最後になるとは思いもしなかった。
「負け犬のままでは終われない」
坂本氏がエルピーダを離れた後、中国企業に活動の場を求めたことは本人が時折、取材に応じて明らかにしていた。ただし、それは顧問や社外取締役としての側面支援というレベルではない。
本人は常々、「負け犬のままでは終われない」と語り、あくまで現役の経営者として復権することを真剣に考え、実行していた。近年は休日には剣道に打ち込んでいたが、これも経営者として戦える健康づくりが大きな目的だった。
坂本氏は「日本TIの社長になれなかったのは大きな挫折だった」と回顧しており、順調に出世していればエルピーダの社長を引き受けなかった可能性が高い。エルピーダが健在で、DRAMの世界シェアでサムスン電子など韓国勢を再逆転する目標を達成していれば、坂本氏は引退していたかもしれない。
本人にとっては、エルピーダの破綻は経営者として負けであり、リベンジの場を中国企業に求めたのだろう。
坂本氏は2002年のエルピーダ移籍の直前まで聯華電子(UMC)の日本子会社の社長を務め、移籍後は力晶半導体(パワーチップ)と提携するなど台湾メーカーと縁が深かった。
中国政治の変化に翻弄される
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