三菱商事が「ローソンを非上場化」する真の狙い 「KFC売却」も俎上、聖域なき中西社長の事業再編
東洋経済オンライン / 2024年3月6日 7時0分
「会長案件にも容赦なく手をつけた。中西(勝也)社長は覚悟を決めた」。2月6日、三菱商事関係者は声を上げた。
【グラフ】ローソンの時価総額は三菱商事の子会社化後、低迷してきた
三菱商事は同日、現在50.1%出資する連結子会社のローソンの出資比率を50%まで引き下げ、KDDIと折半出資の「共同経営」に移行することを発表した。KDDIは4月以降、約5000億円を投じてローソンに対するTOB(株式公開買い付け)を実施し、9月をメドにローソンを非公開化する。
ローソンだけではない。三菱商事はケンタッキーフライドチキンを全国展開する日本KFCホールディングスの全株式売却(35%超保有)も目下、検討している。三菱商事でいったい何が起きているのか。
虎の子のローソンを子会社から外す決断
2017年のローソン子会社化(33.4%→50.1%)を推進したのは、食品など生活産業部門出身の垣内威彦社長(現会長)だ。当時、三菱商事は資源ビジネスで巨額の減損を計上し、戦後最悪となる1493億円の最終赤字(2016年3月期)に沈むなど苦境にあった。
逆にローソンは2016年2月期に「グリーンスムージー」がヒットするなど業績好調で、営業利益725億円の過去最高益となった。TOBに1440億円を投じたローソン子会社化は配当や利益の取り込みだけでなく、三菱商事が起死回生をかける象徴的案件でもあった。
当時の垣内社長は、「ローソンのためには何でもやれ」と大号令をかけた。三菱食品と一体となった物流改革をはじめ、海外支店長がゴディバとローソンをつなぎ、高級スイーツに参入するなど、まさに全社あげてのローソン支援体制が敷かれた。
その虎の子のローソンを子会社から外す決断を中西社長は下したのだ。
2月の記者会見で中西社長は、「三菱商事だけではローソンの企業価値を上げるのには限界がある」と認め、「グループとしても食品デリバリーなどのアドオン(機能追加)をしてきたが、これ以上追加でサポートできるか悩んでいた」と明かした。
ローソンは店舗数だけでなく日販(1店舗当たりの平均日商)でも2021年にファミリーマートに抜かれ、業界3位が定位置となった。時価総額も三菱商事が子会社化を発表した2016年以降、長らく低迷が続いてきた(下図)。
SMBC日興証券の森本晃シニアアナリストは、「株価が一番正直な経営の通信簿だ。直近ではローソンの業績も回復し株価も上がってきているが、これまでの軌跡を見ると三菱商事の経営陣はローソンの企業価値を毀損し続けてきた」と話す。
ローソンの資産効率改善は市場からの要請
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