ワコール社長「S/M/L」で下着の価値は伝わらない 構造改革で社内に軋轢、社員説明会で伝えたこと
東洋経済オンライン / 2024年3月7日 7時50分
――2023年4月の社長就任前に「ワコールグループ創立以来の危機」というメッセージはどのような思いで出したのですか。
正直に言うと、会社が危機的状況なのが従業員の皆さんに伝わっているのか? という不安があった。財務は大丈夫かもしれないが、売上高は徐々に下がっているし、収益性も落ちてきている。現状のやり方を変えなければ、会社全体が本当にまずい状況になってしまう、という思いだった。
もちろん、当社の歴史の中で培ってきた商品の品質だとか、お客さんから得た信頼は守っていかなければならない。だが、うまくいっていないブランドや商品を続けていいのか。
今回の中計で掲げた課題は、過去から言われ続けてきたことばかりだが、何か1つ変えようとすると「取引先との兼ね合いで」「不動産の文化的な価値が」などと言って先送りにしてきた。何も解決していない状況を、もうやめようよ、と。
下着がフィットする感覚を知らないのでは
――一連の改革で、商品や提案方法はどう変わりますか?
購買履歴などから、消費者像が以前よりも鮮明にわかるようになっている。従来は「(ヒット商品の)グッドアップブラ」に代表されるように、胸を寄せて上げるといったワコールの強みをそのまま提供価値として打ち出していたが、今なら1人ひとりのニーズに合った商品が提案できる。
既存顧客には個別アプローチを強化する一方で、実は下着に関心がない層が増えているという危機感がある。ユニクロやしまむらといった競合が伸びてきて、下着もS/M/Lといった分類で買えるようになった。決してそれが良くないというわけではないが、今まで採寸や試着をしてこなかった方は、下着が本当にフィットしている感覚を知らないのではないか。
下着の価値を知らないまま、下着に対する期待感も薄れてしまっていると思う。その価値を知ってもらうために、3Dスキャンで全身18カ所のサイズがわかるワコールのスキャンビー(SCANBE)や、販売員がサイズを計測してカウンセリングを行う「ブラ無料診断」などを行っている。
こうしたサービスでは、販売員が無理に販売することはない。計測して、もしよければ実際に試していただいて価値を知ってもらう。こうした地道な努力をしていかないと、下着のマーケットは盛り上がっていかない。潜在顧客へのアプローチは、専業メーカーであるワコールがやるべきことだと思っている。
ROICの考え方はシンプル
――今回の中計策定は、東証からの「PBR1倍割れ改善」の要請に対する意思表示でもありました。
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