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認知症の親を追い詰める「記憶の確認クイズ」 大切なのはいち早く「答え」を明かすこと

東洋経済オンライン / 2024年3月8日 17時0分

あるお坊さんの説法で「喜怒哀楽の4:1:2:3のバランス」という話を聞きました。

喜びが4つ、怒りが1つ、哀しみが2つ、楽しみが3つ。これが人生のバランス。

もっと言えば、今日一日が、このバランスで成り立っていれば十分だよ、という意味です。

私は仏教徒ではありませんが、なるほどと思います。

認知症の人は、記憶は苦手になっていますが、感情は豊かに残っています。

否定ばかりされてしまうと、怒りと哀しみが1や2では済まないわけです。

その結果、「この人はいやな人だ」「すぐに怒る」という意識が刷り込まれ、心の「ブラックリスト」に載ってしまうと、なにを提案してもうまくいきません。 

お茶をお出ししても、ひと口も飲みません。

リハビリにも行きませんし、トイレにも行きません。つまり、「あなたとするのはいや」ということですね。

つい私たちは、それを「介護拒否」と言ってしまいますが、そうさせたのは認知症なのか、関係性のせいなのかと考えると、後者であることが多いのです。

「あえて失敗させる」ことでフリーズ回避

スピーチロックを防ぐためには、頭ごなしに否定しないことです。

また、危険のない小さな失敗だったら、「あえて失敗させる」というのも手です。

たとえば、認知症の方の中には、フォーク1本と箸1本でご飯を食べようとする人もいます。

当然、うまく食べられません。

そんなときには、「うまく食べられない」という経験をあえてさせてあげてから、箸2本で食べる姿を目の前で見せてあげると、「そうすればいいのか」となります。

中には、靴とサンダルを片方ずつ履いてしまう人もいます。

でも、その場では言いません。

玄関から出たときに指摘するのですが、そのときの言葉は、「間違ってますよ」ではなく「あれ? ○○さん、足が痛いんですか?」です。

「いや痛くないよ」「なんだぁ、足が痛いのかと思いました。片方、サンダルですよ」というやりとりで「あ、本当だ(笑)」という「晴れ」に流れが変わります。

ただ……毎回これをやっていると、家族は大変。

先回りして、履いてほしい靴だけを出して失敗を防いだほうが楽ですし、そこに罪悪感は持たないでください。

失敗させたり、先回りしたり。

その両方を使い分ければよいと思います。

スピーチロックの「置きかえリスト」

スピーチロックは、「否定的な言葉」以外にもたくさんあります。

たとえば、つい言ってしまいがちな「ちょっと待ってて」。

言われたほうにすれば、「どれくらい待っていればいいの?」となって、動きがとれなくなってしまうことがあります。

また、「待ってて」には、命令のような強さがあります。

結果として、自分から行動しようという意欲を失わせたり、被害妄想につながったりして、症状が悪化してしまうことも。

スピーチロックになりかねない言葉は、できるだけ置き換えていきましょう。

「ちょっと待ってて」ではなく、「〇〇を済ませちゃうから、あと5分くらい待っててもらっていい?」。

5分という数字を手で表しながら、視覚的に覚えやすく伝えます。

こうして、待つ理由と時間を説明し、視覚的な記憶を強化した状態でお願いする形をとることで、安心感と信頼感が生まれます。

川畑 智:理学療法士

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