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命の危機でも「人工中絶拒否」米国の痛ましい現実 共和党支持者中心に人工中絶反対の流れが加速

東洋経済オンライン / 2024年3月8日 13時0分

「ジェーン」は映画にも描かれていた通り、秘密裏に行われていた活動なのでそれほど社会的に広く知られていませんでした。やはり、2022年に最高裁の判決で、ロー対ウェイド判決が覆されてからは、いろいろなドキュメンタリーでも描かれるようになり、今ではより多くの人に知られる事実となりました。

映画が社会に追いついてしまった

――この企画を準備していたときに、投資家からいい返事が返ってこなかったり、同じ考えを持つ人たちからも「ちょっとこれに参加するのは厳しい」というような声があったと聞きました。この題材に対してタブーのような雰囲気がアメリカでもあったということなのでしょうか?

今でこそ、最高裁がロー対ウェイド判決を覆したことによって、この中絶問題にも注目が集まっているのですが、実はこの企画が始まったときはそこまで差し迫った感じではなかったんです。

われわれ女性が持っている権利も、別に剥奪されるわけがないし、そんなに差し迫った問題じゃないんじゃないか、と楽観視されていたんです。今だったらよりつくりやすい環境にはあると思うのですが、どちらにしても完成にこぎつけることができて本当によかったと思います。

というのも、例えば日本でもニュースが入っているかもしれませんが、アラバマ州とかでは共和党の支持者が多い州ということで、中絶を原則禁止する法案が可決されています。

今では体外受精で使うための受精卵を凍結保存した「凍結胚」までも子どもとして認めるという判決が下されてしまいました。だからむしろこの映画で描かれている社会情勢というのは、まだまだおとなしいほうなんじゃないかなと思っています。そういう意味で、この映画が社会に追いついてしまったという感じがしています。

――現在、トランプ前大統領がふたたび大統領に返り咲こうと動いていますが、そうした状況はどうご覧になっていますか?

もうとにかく驚いたを通り越して、落胆という言葉しか出てこないですね。いったいわれわれは何を見せられているんだろうと。まるでローマ帝国の終焉でも見させられているような不条理劇で、暗澹(あんたん)たる気持ちになってきますね。

わたしはイギリスのパスポートを持っているので、最悪イギリスに行ってもいいんですけど、イギリスにだって問題はありますからね……。なんだか世界中で保守の揺り戻しが起きているというか……。

男性ヒーローが不在の物語

――そんな状況だからこそ、この映画はタイムリーだと思いますし、オスカーにノミネートされてもよかったぐらいの力作だと思うのですが。

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