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青くてエモい「ブルーライト文芸」大ブームの理由 「田舎の夏、ヒロインが消える」物語なぜウケる?

東洋経済オンライン / 2024年3月9日 7時0分

最終的にヒロインの香織は病気のために亡くなってしまうのだが、これが「ヒロインの消失」だ。他の作品でも、ヒロインが何らかの病気にかかっていることが多く、しかも最後にはヒロインが死んでしまうことが多い。

『キミスイ』『君の名は。』のヒットが方向性を決めた

ぺシミ氏はこうした一連の作品の方向性を決定づけた存在として、話の内容で言えば2015年の『君の膵臓をたべたい』、ビジュアル面で言えば2016年の『君の名は。』の存在を挙げる。

『君の膵臓をたべたい』は、膵臓の病気を患うヒロインとの悲恋が描かれた住野よるの作品で、映画化もされ大ヒット。その作品構造は、確かにブルーライト文芸の通りだ。

また、『君の名は。』は、その「エモい」と言われたポスタービジュアルで大きな反響を呼んだ。たしかに、映画ポスターは青く、逆光も相まってキラキラしている。

このポスターが多くの人に認知され、特に若年層の人気を得たことで、こうした文芸作品の表紙が若者受けする「青い」表紙になったという経緯もあるだろう。

こうしたヒット作が内容とビジュアルの両面から後押しして、「ブルーライト文芸」というフォーマットが生まれていった。

「ケータイ小説」「ライトノベル」という2つの潮流

これらのヒット作の影響が決定的だったとはいえ、ブルーライト文芸には、そこに至る歴史的な流れがあった。ペシミ氏によれば、「ブルーライト文芸」に分類される作家たちの系譜を見ると、そこには2つの潮流があるという。

「1つが、『恋空』や『Deep Love』で知られるスターツ出版が得意とした、ケータイ小説からの流れです。こちらは主に女性読者を対象としています。2つ目が、男性読者を対象としていたライトノベルからの流れです。

もともとケータイ小説は少女漫画のメンタリティに近かったので、初期は俺様キャラとかの偉そうな男キャラが流行っていて、題材としても『売春』や『妊娠』『不治の病』など、ダークな要素を含む作品も書かれていました。

しかし、時代が下るにつれて、相手の男の子が『クールで無気力だけど、一途な男キャラ』に変化していったんです。このような変化を経て、もともと距離があったはずの『ケータイ小説』と『(ラノベ作家が文芸作品を書くという意味での)ライト文芸』が接近していきました。

結果、それぞれまったく異なる読者層を想定していた作品であるはずなのに、類似点が多い作品群が生まれた。それらをまとめて分類する用語として『ブルーライト文芸』という言葉を使いました。 

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