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青くてエモい「ブルーライト文芸」大ブームの理由 「田舎の夏、ヒロインが消える」物語なぜウケる?

東洋経済オンライン / 2024年3月9日 7時0分

『ライト文芸』というと、今ではどうしても女性向けの作品、という印象が強く、入間人間、河野裕、三秋縋らの2010年代前半にライトノベルと一般文芸の境界で活躍したような作家たちの創り上げてきた、ライトノベル的な流れを汲んだ『ライト文芸』の文脈が見逃されてしまうので、その2つを合わせたものとしてブルーライト文芸と呼ぼう、という意図もあります」

ブルーライト文芸の歴史を紐解いていくと、ケータイ小説、ライトノベルという2000年代、2010年代に流行した文芸作品の流行が見えてくるという。

そこに『君の膵臓をたべたい』『君の名は。』という作品が登場することによって、ビジュアル面や話の内容での類似性が生まれてきたのだ。

『風立ちぬ』が及ぼした影響は大きい?

ケータイ小説、ライトノベルの文脈から生まれたブルーライト文芸だが、その話の定番パターンである「ヒロインが病気になる」ということに対しては、「病をエンタメコンテンツとして消費している」といった声もあるかもしれない。

しかし、興味深いのは、こうした文芸作品のスタイルは、日本において歴史的に繰り返されてきたということだという。ペシミ氏が説明する。

「病気で亡くなってしまうという少女の話の源流を辿っていくと、サナトリウム文学があります。結核患者を題材にした文学作品のことで、代表的なところでいえば、堀辰雄の『風立ちぬ』ですね」

『風立ちぬ』は、宮崎駿によって映画化もされた文学作品で(宮崎の作品では堀越二郎の半生を合わせたような形で創作された)、主人公が田舎の結核患者の隔離施設であるサナトリウムを訪れて、そこで少女と出会う話である。

本作は、肺結核を病んだ堀自身の体験をもとに執筆された作品で、ヒロインである節子のモデルは、夭逝した堀の婚約者・矢野綾子である。

実際、『風立ちぬ』のヒロインも、最後には結核で亡くなってしまう。

「日本は、堀辰雄が用意したこのフォーマットにのっとって、何度も創作を繰り返してきました。起源については『風立ちぬ』以外にも諸説ありますが、ブルーライト文芸は現代版のサナトリウム文学であると言えるかもしれません」

ブルーライト文芸と日本文学の共通点

ブルーライト文芸には、他の日本文学の作品との共通点もあるという。

「2022年に映画化もされた宇山佳佑『桜のような僕の恋人』の最後では、ヒロインが消えてしまったのに、去年より桜がより美しく、儚く見えるということが描かれていますが、こうした感性は、梶井基次郎の『桜の樹の下には』と一緒なんです」

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