世界が憧れる京都「西陣織」はエルメスになれるか シャネル幹部も感涙する「美」その魅力と課題
東洋経済オンライン / 2024年3月9日 10時30分
政府は、2030年には、現在の約3倍の旅行者を受け入れる目標を掲げるなど、インバウンド需要は、日本の美や技術、歴史や伝統を世界に広める大きな起爆剤となることが見込まれる。
それは日本初の世界に冠たるラグジュアリー産業の勃興の変化点ともなりうるものである。
欧州には、LVMH(ルイ・ヴィトンなど)、Hermes(エルメス)、Richemont(カルティエなど)、Kering(グッチなど)などの高級有名ブランドを束ねる超大企業が数多く存在しており、私もかつてこれら企業の本社に幾度となく訪れた。
「デザインとクラフトの融合」「厳しい生産管理体制」「直営店主体の販売による徹底した流通・在庫管理」「不況であっても値下げをしない意思」「知的財産に対するロビーイング」など、多くを学ばせてもらった。
トヨタ自動車を超える「世界のラグジュアリー企業」
2023年末時点のLVMHの企業価値は、日本企業同首位のトヨタ自動車の1.7倍、エルメスはトヨタ自動車の0.9倍と、紛れもなく世界を代表する企業群である。
2024年から始まった新NISAでの定番商品である“世界株式指数”の投資信託を買われている方は、すでにこれらの欧州企業のオーナーとなっている。
欧州ラグジュアリー産業の盛衰は、これら企業の消費者だけではなく、より多くの人の資産形成として影響を及ぼしているのだ。
京都の織物には1500年の歴史があるが、多品種少量生産、先染めの「絹織物」である西陣織のなかでも、誉田屋源兵衛の主力商品は、数十万円から数百万円の女性着物の「高級帯」だ。
伝統と歴史、技術と美を兼ね備えた西陣織は、前述の世界的な欧州ラグジュアリー企業、そして博物館や美術館より惜しみない尊敬の念を集めている。
世界のラグジュアリー企業が憧れる京都・西陣織
数年前、誉田屋へは「フランスのシャネル本社より経営陣以下、社員100名の研修での訪問があった」という。
フランスから日本まで、渡航費だけでも数千万円の費用がかかると思われるが、これはいったい、何を意味するのだろうか。
シャネルが世界トップのラグジュアリーブランドであり続けるためには、世界最高峰の「美」を学ぶことが必要であり、京都の西陣織がその対象となったことにほかならない。
源兵衛氏が奏でる「美」を理解するために、自ら京都へ足を運び、織元の古商家の匂いを感じ、両目で色や形を見て、作家と対話し、作品に直に触れる。五感すべてを使って学ぶ企業研修だ。
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