「内向型の人」が強みを生かして成果を出す働き方 アップルの成功も「内向型」の力が導いた
東洋経済オンライン / 2024年3月10日 16時0分
1人を好み、控えめで、思慮深い「内向型」。近年、世界の研究機関で次々と、内向型の「秘めたる潜在能力」が科学的に証明されています。アメリカのアップルには「2人のスティーブ」がいました。1人は誰もが思い浮かぶスティーブ・ジョブズ。もう1人はアップルの土台となった最初のパソコンをつくったスティーブ・ウォズニアックです。「実はアップルの成功は、内向型であるウォズニアックの力が大きかったのです」と「超外向型社会・アメリカ」の精神科医である大山氏は言います。その理由について、同氏の新刊『精神科医が教える「静かな人」のすごい力』から一部抜粋・再構成してお届けします。
『ビューティフル・マインド』:ノーベル賞と内向性
「独創性」と聞くと何か特別な能力のように聞こえるかもしれませんが、誰でも独創性のタネは持っています。
人間の内面は千差万別だからです。100人いれば100通り、100万人いれば100万通りの内面世界があります。そこに没入して、自分自身と向き合えば、人とは違った独自性を獲得できます。
問題は「内面に向き合えるかどうか」です。自分の内面よりも外の出来事(わかりやすい例が社交やパーティー) ばかりに関心がある人は独創性のタネを育てられません。外のみに注意を向けているとタネは腐ってしまいます。
独創性を発揮する人は外の世界に関心を向けるよりは、「自分の内面」を重視します。トレンドに流されずに「自分らしさ」を大事にします。まさに内向型の得意分野です。独創的なクリエイターに内向型が多いのも、内向型は内面を見て深い思考ができるからです。
「自分の内面」と向き合って独創性を発揮した人物としてはジョン・ナッシュが挙げられます。
ナッシュは天才数学者で、ある状況での複数のプレイヤーの行動を予測する「ゲーム理論」の研究で知られています。どのプレイヤーも相手との協力なしにこれ以上利益を増やせない状態では現状維持状態が発生するという「ナッシュ均衡」を提唱し、この成果で1994年にはノーベル経済学賞を受賞しています。
彼は1928年に技術者であった父と教師であった母の元に生まれます。典型的な内向型で人と打ち解けるのが苦手であった反面、科学や実験には強い興味を持つ好奇心旺盛な性格でした。大学では化学や数学など専攻を転々とし、やがて経済学に興味を持つようになりました。
天才も凡人も、人の幸せは「自分らしさ」にある
彼の半生は2001年に公開された映画『ビューティフル・マインド』に凝縮されています。映画は1947年、ナッシュがプリンストン大学の大学院に到着したところから始まります。数学によって世界を支配する真理を見つけたい、真に独創的な着想を見つけたい、と授業に出る暇も惜しんで研究にひたすら没頭する姿が描かれています。
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