「大谷翔平も使う計測機」を扱う開発者たちの正体 ミズノが実現した「野球データの民主化」
東洋経済オンライン / 2024年3月10日 7時40分
中田氏は、端的に言えば競技の現場で「選手に寄り添う」スタンスだと言えよう。「競技人口」が減少している野球界にあって、その視点は非常に重要だ。
もう一人、野球の現場を「バッグ」の開発で支えているのが、中田氏と同じミズノグローバルイクイップメントプロダクト部の篠原果寿氏だ。
篠原氏は、徳島県阿南市の出身。高校まで野球を続け、滋賀大学に進む。教員になるつもりだったが、知見を拡げるために筑波大学大学院の川村卓准教授の研究室に入った。中田氏の後輩だ。
「修士課程を修了後、やはり教員になろうかと思ったのですが、大学院に在学中、イタリアなど世界の野球を観て回って、野球を普及させるためには『用具』がキーワードなんじゃないかと思って、ミズノに入社し、営業を経て企画担当になりました」
侍ジャパンのバックパックを開発
昨年のWBCでは、侍ジャパンの選手たちが、ロゴが入ったバックパックを背負ってベンチ入りする姿が見られたが、篠原氏の仕事はこうしたバッグの企画、開発を行った。また、高校球児が甲子園で背負っているバックパックも設計、開発している。
「今の高校球児が、絶対に持っているものは何か? 実は、タブレット端末なんですね。高校は移行期で、生徒は教科書もタブレット端末も一緒に学校に持ってきている。いずれタブレットだけになるでしょうが、一番荷物が重い時期なんですよ。だから野球部のバックパックもタブレット端末も教科書も一緒に収納できるように容量を拡げました」
昔の強豪校には「野球漬け」の高校が多かったが、今は、野球が強い学校でもしっかり授業を受けるのが一般的になっている。また、野球の作戦や技術習得でタブレットを使うことが多くなっているのだ。
「また、フェースガードのついたヘルメットを装着することが増えました。なおかつ、コロナ禍以降、共有する用具が少なくなって、打者のプロテクターなども個人持ちが多くなった。だから、そういう用具も収納できることが求められます。昨今は、バッグにバットを差してグラウンド入りする学校もある。だったら、バットも差せるようにしましょうと」
どんどん、収納するアイテムが増えているのだ。
「でも大容量にしてしまうと、バッグの下のほうに入ったものが取り出しにくくなる。そこで、下のほうにアクセス(取り出し口)をつけました」
バックパックの重さを軽減する特許
しかし、いくら屈強な野球選手でも、これだけいろいろなものを背負うと、バックパックは相当な重さになると思うが。
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