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英国の統計「移民約50万人の見落とし」ヤバい背景 データは信頼できる?EUから離脱を問う火種に

東洋経済オンライン / 2024年3月11日 14時0分

英のEU離脱問題 離脱派が大規模集会(撮影:2019年)(写真:Alamy/アフロ)

政府統計や人口調査と聞けば、私たちはつい「信頼できるもの」だと思い込んでしまう。しかし、その内実は驚くほどのドタバタ劇に満ちている。イギリスでは2011年の国勢調査で、約50万人の移民が見落とされていたという驚愕の事実が判明した。その衝撃は、「人の自由な移動を認めるEUからイギリスは離脱すべきだ」という世論に火をつけ、2016年のブレグジットの国民投票へと繋がっていった。いったいなぜ、「入国してくる移民を丸ごと見落としてしまう」というような、あまりにもお粗末な事態が生じることになってしまったのだろうか。統計学者のジョージナ・スタージ氏が上梓した『ヤバい統計』から一部を抜粋して紹介する。

移民たちが丸ごと見落とされていた

「英国の人口が推測よりも50万人以上多い」という、2011年の国勢調査前の10年間で生じたずれでは、いくつかの移入民の集団が、丸ごとすっかり見落とされていた。

【写真】ジョージナ・スタージ著の『ヤバい統計』は政府統計の世界を知りつくす著者が、多彩な事例を用いながら、その舞台裏を紹介する。

この事態を説明するには、2003年秋のハンガリーに時間を戻さなければならない。

ビジネスマンのヨージェフ・ヴァーラディは、自身の運を好転させなければならなかった。というのも、彼は不振にあえぐマレーヴ・ハンガリー航空のCEOを辞職したばかりだったのだ。

新規のビジネスに挑戦したかったヴァーラディは、余計なサービスを省いた格安航空会社「ウィズエアー」を共同で創業した。このビジネスモデルの有効性は、英国のイージージェットやアイルランドのライアンエアーといった同業他社によって実証ずみだった。要は、旅はしたいが、余計なサービスのために大金を払いたくない人が大勢いるということだ。

しかも、場合によっては10ポンド(約1900円)未満でチケットが買えることを考えれば、ルートンやリーズといった、ヒースロー空港(注:ロンドン西部にある英国最大の空港)よりも華やかさに欠ける地方空港から出発することはなんの問題もなかった。

そもそも、免税価格で香りつきのウォッカや、ひどく高いサングラスを買おうかどうか迷いながらヒースローで2時間過ごすのを、心から楽しんでいる人などいるのだろうか?

また、このタイミングでの業界参入にも、きわめて大きな意味があった。2003年4月に行われた、ハンガリーのEU加盟の是非を問う国民投票では、賛成票が83%だった。そうしてハンガリーの人々は、ヨーロッパ大陸のどこにでも住んで働ける自由を、翌年からほぼ無条件で手に入れられることになった。

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