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『相棒』ただの刑事ドラマを超えた円熟の魅力 杉下右京の「やさしさ」と登場人物の「その後」

東洋経済オンライン / 2024年3月12日 13時30分

そしてラストの場面。右京がひとり特命係の部屋でなにやら手紙を認めている。その書き出しには「宮部たまき様」とあった。

たまき(高樹沙耶[現・益戸育江])は、右京の元妻。特命係行きつけの小料理屋「花の里」の女将でもあった。連続ドラマ化される前の2時間ドラマ時代からの登場人物だったが、小料理屋をやめて世界を巡る旅に出てしまい、その後登場していない。

右京とは離婚しているが、2人のあいだには固い信頼関係、互いを思いやる気持ちがあった。その思いがいまも変わっていないことが、右京が手紙を書く場面からはひと目で伝わってきた。

似たような場面は薫に対してもあった。

第14話「亀裂」では、薫が右京に自作のティーカップを手渡す場面がある。右京の紅茶好きはいうまでもない。手先が器用とは言えない薫がつくったものとあってちょっと不格好なかたちなのだが、それを眺めた右京は、「不器用で愚直、そして温かい」とカップの印象を語る。

そしてそれが自分へのプレゼントであるとわかると、手に取ってなんともうれしそうな表情を浮かべる。カップへの称賛は、いうまでもなく薫に対する右京の偽らざる思いでもあるはずだ。

このようにしみじみとする場面の連続で、今シーズンの杉下右京はこれまで以上に“情愛のひと”という印象が強かった。

再び動き出した甲斐享の物語

さらに『相棒』ファンから注目を集めたのが、甲斐享(成宮寛貴)の“復活”である。

甲斐享は3代目の相棒。右京が将来性を見込んで自ら特命係にスカウトしたという経緯があった。だがその若さゆえに、ありあまる正義感が暴走し、法の裁きを免れ、のうのうと生きている犯罪者に自ら隠れて制裁を加えていたことが発覚。最後は右京に逮捕されて警察を去ることになる。この結末は、当時『相棒』ファンにとっても予想外でショッキングなものだった。

それから時は流れ、今回の元日スペシャルで動きがあった。恋人でパートナーだった笛吹悦子(真飛聖)とのあいだに誕生した息子・結平(森優理斗)が登場。その結平が主演する学芸会の舞台上で殺人事件が起こり、観覧に来ていた右京と薫が捜査に乗り出す。いままでその存在だけが知らされていた享の兄(新納慎也)も初お目見えした。

ただし、今回甲斐享本人は登場しなかった。しかし、不在のなかにも彼をめぐる物語が再び動き始めたという感触が強く残った。

そのことに関連して、第16話「子ほめ」での右京の言葉も思い出される。

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