「岸田首相のピンチ」を救う大谷翔平の存在感 「ウクライナ訪問」「政倫審」を"翔タイム"直撃
東洋経済オンライン / 2024年3月12日 10時0分
自民党の巨額裏金事件で揺れる政治改革国会は、2月末から3月2日にかけての異例ずくめの与野党攻防で新年度予算の年度内成立が確定。守勢一方の岸田文雄首相ら与党幹部は安堵したが、その後も国民の自民不信は強まるばかりで、内閣と自民党の支持率は過去最低の更新が続く。このため、4月28日投開票の衆参統一補選をにらんでの「年度末衆院解散説」も浮上するなど、政局の混迷度は拡大するばかりだ。
そうした中、永田町で話題となっているのが、岸田首相とアメリカ大リーグドジャース・大谷翔平選手との不可思議な因縁だ。国民の怒りを増幅させた2月29日の衆院政治倫理審査会での質疑の最中に飛び込んだのが「大谷結婚」情報。すぐさまNHKや民放テレビ各局は大々的に速報し、その後の各情報番組も「大谷結婚特番」となって、政倫審情報は片隅に追いやられた。
これに対し、自民党内には「大谷は自民大ピンチを救った」(若手)との声が相次ぎ、岸田首相周辺も「大谷サマサマ」と相好を崩した。確かに、岸田首相と安倍、二階両派幹部5氏に対する2日間の政倫審質疑は、「見え透いたウソばかり」(立憲民主)にみえ、大々的に報道されれば「国民の怒りは沸点に達したはず」(同)だが、「報道量の激減」で岸田政権へのダメージが最小化されたからだ。
「2人と1匹」情報が政倫審を吹きとばす
政治史を振り返ると、有力政治家らの不祥事が、有名人の逮捕などでかき消された事例は少なくない。ただ、今回のように、政治改革国会最大のハイライトの「政倫審での疑惑解明」が始まったときに、日本が世界に誇るスーパースターの結婚という大ニュースが飛び込むというのは「誰も予想しなかった展開」(自民長老)だ。しかも、与党内には「首相の強運はまだ続いている」(同)との見方も広がるなど、異様な状況を呈している。
そもそも、裏金事件の真相究明のための政倫審の開催日程が、公開の可否を巡る自民党内の混乱で、当初予定の2月28、29日から1日間ずれ込み、しかも野党の出席要求の対象外だった岸田首相が突然、「全面公開での出席」を宣言したことが、今回の想定外の展開につながった。
当初の予定通りの開催なら、出席を申し出た安倍、二階両派の事務総長経験者5氏の弁明と質疑は、「『2人と1匹』に象徴されたビッグニュースが飛び出す前の29日午後までに終わっていたはず」(政倫審幹事)だった。もちろん、それでも各情報番組の政倫審報道の大幅減は避けられなかったとみられるが、「少なくとも28日は政倫審情報が最優先された」(民放テレビ幹部)ことは間違いない。
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