「岸田首相のピンチ」を救う大谷翔平の存在感 「ウクライナ訪問」「政倫審」を"翔タイム"直撃
東洋経済オンライン / 2024年3月12日 10時0分
事実、29日夕刻以降の各種情報番組はいずれも「内容を変更してお伝えします」という但し書き付きで、急遽「大谷結婚特番」に衣替えした。加えて、3月1日早朝の「大谷インタビュー」などで同日以降の情報番組も「大谷特番一色」となり、政倫審でのやり取りは“雑報”扱いに。さらに異例ずくめの1日の「深夜国会」と2日の「土曜国会」という“与野党泥仕合”も、その週末の情報番組などのメインテーマとはならなかった。
その中で、2月29日に自民党本部に集まり、手に汗を握る形で政倫審テレビ中継を見守っていた同党幹部らは、夕刻に「大谷結婚」の報が伝わった途端「予算案採決のチャンス到来と拍手喝采」(党事務局)だったという。確かに、ネット上では「大谷結婚」関連情報がトレンド上位を独占し、「政倫審」情報はあっという間に姿を消した。「その状況が与野党攻防の構図を変え、予算の年度内成立確定につながった」(自民国対)のは間違いない。
WBCが消した「ウクライナ電撃訪問」
そこで、これまで約2年半の岸田首相の政権運営を振り返ると、なぜか重大な節目での「大谷関連ニュース」との絡み合いが際立つ。
その典型が、1年前の2023年3月21日に岸田首相が極秘でウクライナを電撃訪問、ゼレンスキー大統領と初の対面での首脳会談が実現したときだ。岸田首相にとって「乾坤一擲の大勝負」だったが、なんと、日本中が沸き返ったWBC(ワールドベースボールクラシック)準決勝の日本対メキシコ戦にぶつかったのだ。
この準決勝は敗色濃厚だった最終回に、大谷選手の鬼の形相での二塁打のあと、絶不調だった日本の主砲・村上宗隆選手がセンターオーバーのタイムリー二塁打で大逆転のサヨナラ勝ちに。日本中がこの場面に大興奮し、テレビ各局の画面は一日中このシーンばかりを繰り返し、「岸田首相の“快挙”の報道は二の次三の次」(民放テレビ幹部)になったため、岸田首相周辺が「WBCさえなければもっと国民の評価を得られたのに」と愚痴をこぼすなど、今回の政倫審とは真逆の展開だった。
ただ、岸田首相が乗り込んでウクライナに向かった最新鋭のビジネスジェット機は、大谷翔平選手がWBCのキャンプ参加で3月1日にアメリカから日本に帰国する際に使ったものと同じ機種だった。このため、今になって官邸サイドも「何という因縁」(側近)と振り返る。
そもそも、岸田首相にとっては、政権発足当初から大谷選手との“因縁”が始まっていた。2021年10月4日の政権発足後、同月末の衆院選で勝利して政権基盤を固めたが、丁度その時、当時大リーグ4年目だった大谷選手が打者で46本塁打・100打点、投手で9勝2敗・防御率3・18と投打二刀流で大活躍し、日本人として初めて満票でのア・リーグMVPに選ばれていた。
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