資生堂「1500人早期退職」へ追い込んだ2つの元凶 藤原社長が掲げた「4つの条件」に困惑する社員も
東洋経済オンライン / 2024年3月12日 7時0分
「(資生堂が掲げる)ピープル・ファーストで求める4つの人財像は、ご覧の通りです」
【画像】社内外で波紋を呼んだ「ミライシフト JAPAN 2025」と書かれた資生堂の構造改革プラン
2月29日、資生堂社内は動揺に包まれていた。藤原憲太郎社長COO(最高執行責任者)が動画を通し、大規模な早期退職募集を行うと発表したのだ。
動画は「ミライシフト NIPPON 2025」というタイトルから始まり、資生堂ジャパンの成長に向けた方針の1つに「人財変革」を示した。そして藤原社長は冒頭の発言に続き、資生堂ジャパンに残る人材について、次のような条件を掲げた。
「グローバル・ビューティー競争をリードできる『センス』と『スキル』を有している」「期待を超える成果創出に向けた『学習』と自己成長への『情熱』を有している」
この動画を見た現役社員は、「早期希望退職の話が出ると、社員の間には重く暗い雰囲気が漂い始めた」と振り返る。そして「会社に残るなら経営陣が求める人材に変わってくれ、ついていけないなら会社を辞めたほうがいいという独特の論調。現場を支えてきた人材にメスを入れるリスクを、経営陣は理解しているのだろうか」と憤る。
日本事業の1割超の社員が対象
3月8日には個人別の早期退職金の試算書が送られ、3月11日から対象者に向けた管理職との面談が始まった。4月17日から5月8日まで早期退職募集を行い、応募者は9月30日に退職日を迎える予定だ。
今回の早期退職募集は、資生堂ジャパンに所属する社員1500名が対象。2022年度の日本事業の従業員数1万1185人のうち1割超に相当する。45歳以上かつ勤続20年以上を要件とし、退職時年齢に応じた特別加算金等を積み増す。大規模な早期退職募集は2005年に、1000人規模で実施して以来となる。
なぜ資生堂は、ここまでの改革を迫られているのか。同社の日本事業は、2022年度のコア営業利益(営業利益から構造改革費用などの一時的な要因を除いた数値)が130億円の赤字に転落。翌2023年度には同18億円の黒字に浮上したものの、ピーク時である2019年度の営業利益910億円(IFRSへの会計基準変更前)に遠く及ばない。
主な元凶は2つある。1つ目は、インバウンド需要の剥落だ。2019年のコロナ禍以前、資生堂の化粧品は中国人観光客の“爆買い”対象となっていた。利益率の高い高価格帯スキンケア「クレ・ド・ポー ボーテ」などが飛ぶように売れていたが、コロナ禍で急激に低下してしまった。
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