日本人幹部を憤慨させた「アメリカ本社」の要求 時に「ドライすぎる」と感じる背景にあるもの
東洋経済オンライン / 2024年3月13日 8時0分
日本企業に勤めていても、海外の顧客や取引先とやり取りすることは少なくない。だが、目的が同じだったとしても、異なる文化や背景を持つ人たちが集まった場合、双方が驚く事態に発展することも……。本稿では、ドイツやフランス企業などの日本法人で26年間働いた経験を持つ筆者が、日本人と外国人が会議や交渉を行う際の「すれ違い」を解説する。
「脅し」も交えた交渉をするアメリカ企業
アメリカ企業のビジネスのやり方は日本企業のそれとは少し違っている。アメリカではビジネス上のネゴは「駆け引き」で、例えば材料費の高騰による価格交渉の場で以下のようなやり取りが普通に行われる。
サプライヤー:「部品の値上げを認めてくれないのなら製品の出荷を即停止する」
顧客:「部品の価格を低減維持できないなら次期モデルのサプライヤー候補から外す」
例えて言えば、お互いに「銃をちらつかせながら」交渉を行い、交渉の巧拙がビジネスの成否を分けるため手段を選ばない。アメリカ企業はこうした「脅し」も交えた交渉を日本の顧客に対しても行う。私がアメリカ企業の日本法人に勤務していた時も何度も経験した。
その都度、顧客との間に入って、日本式の交渉スタイル、すなわち、部品メーカーの置かれた状況を具体的な資料を示しながら顧客の納得が得られるよう説明し、理解を得て価格交渉を進めた。
日本企業の多くは長期的視点に立って、顧客もサプライヤーも相互に信頼関係を築きビジネスを行っている。例えば、サプライヤーが経営的に困った時は、顧客が積極的に支援することもいとわない。個別の交渉でもこうした信頼関係をベースに双方が納得できる結論へと導いていく。
アメリカ本社からは「なぜ、そんなに時間がかかるんだ。交渉能力が弱い」とプレッシャーをかけられ、日本の顧客からは「アメリカ本社がアメリカ式の交渉をすることは理解できるが、日本法人がしっかりと本社をうまくリードしてくれ」と言われ板挟みになる。
契約に基づく範囲で自社の利益を最大化することが当然のことだとされているからだ。ビジネスとはそういうものであり、日常生活においても契約に基づく行為が一般的だ。
アメリカ企業が契約重視のワケ
アメリカ企業の契約重視の考え方の背景には、多民族国家ゆえの「相手は自分とは異なる考えや常識を持っているはずだ」という前提がある。日本では「自分たちは単一民族国家だ」との思い込みもあり、ビジネスにおいても「細かいことは言わなくても話し合えばわかり合えるはずだ」という思い込みがある。そこには、契約書に書かれていない「相互信頼」の基盤がある。
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