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音楽が抜群に凄い人は「生まれつきではない」証拠 練習量がカギ、達人になるための近道はない

東洋経済オンライン / 2024年3月14日 17時0分

「才能を発掘」というけれど、そもそも「才能」などというものは存在するのでしょうか?(写真:SunnyGraph/getty)

歌が上手い、演奏が凄い。音楽の分野で優れた人を見て「あれは天性だな」と感じるかもしれません。しかし、本当に生まれつきの「才能」が全てを決めるのでしょうか。20カ国以上で翻訳され、何年も読まれ続けるロングセラーの新装版『新版 究極の鍛錬』よりお届けします。

生まれつきの音楽の才能

1992年、イギリスの小さな研究グループは「生まれつき才能がある人間」を探し出そうとしたが、結局見つけることができなかった。

誰も異存がない音楽の才能というものを彼らは探していた。一般に才能がもっとも機能すると考えられている種類の分野だからだ。音楽には才能というものが存在するはずである。ある人は歌うことが下手で、ある人は歌がうまい。そこには理由があるはずだ。

なぜモーツァルトが十代で交響曲が書けたのか。まだほんの子どもでしかないにもかかわらずピアノを上手に弾ける子もいれば、音階を弾くだけで精いっぱいの子もいるのはなぜだろうか。音楽の才能をもって生まれた幸運な人たちがいるのだと、多くの人は単純に思い込んでいる。そういった生まれつきの才能こそ上手に演奏できる主な理由だと思っている。

主に教育に従事する専門家で構成されているグループに対し、サンプル調査を行った研究がある。その結果、75%の人たちは歌ったり作曲したり、楽器を演奏したりするには特別の才能や生まれつきの才能が必要であると信じていた。この75%というのは、才能が必要だと信じられている他のどの専門分野と比べても、際立って高い数値だ。

まず研究者たちは257人の若者を対象に調査を実施した。この若者の集団は音楽の教育を受けているというだけで、その他の分野で共通点はみられない。能力別に5つのグループに分け、音楽学校の厳しい選抜試験を経て音楽学生になったトップグループから、6カ月ほどは楽器演奏をしてみたが、その後やめてしまった者までが含まれている。研究者はこの集団を年齢、性別、演奏する楽器、社会経済階層によってグループ分けした。

そして、研究者は学生だけではなくその両親にまでインタビューした。子どもたちはどのくらい練習したのか。何歳くらいで曲とわかるようなものを演奏したのかなど調査した。研究者にとって幸運だったのは、イギリスの教育制度がこれら5つの能力別グループ分けを超えた独自の演奏能力に関する評価方法を提供してくれたことだった。

イギリス全土で行われている若い演奏者の評価方法は、厳密に統一されている。具体的にいうと、楽器を学ぶ生徒のほとんどが国に評価される昇級試験を受けるからだ。評価者は、それぞれの生徒の能力を9つの等級の一つに当てはめることになっている。

生まれつきの才能の証はなかった

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