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感情表現で交渉や面接の結果を有益に変える方法 人間の話し合いは理性以外の要素も大きい

東洋経済オンライン / 2024年3月14日 10時30分

逆に、買い手がどうしても商品を買いたい場合、力関係は売り手の方が上です。怒り表情を見せられた買い手は、「買えないかもしれない」という脅威を回避するために、譲歩する、ということです。

私が実施したこの実験でも、買い手及び売り手のポイントが平等になり得る条件の組み合わせがあったものの、怒り表情(あるいは、熟考、その両方)を生じさせたこの画像の買い手は、売り手から譲歩を引き出し、売り手に比べ、1.3倍ほど多くポイントを獲得することができました。

力関係によって効果が変化する

しかし、力がないのに、怒り表情を見せることは逆効果になります。また、力があったとしても、怒りによって譲歩を引き出され、利得を失った交渉相手は、怒りを表出した人物に対する信頼を失い、その人物と将来交渉したくないと思うようになる、ということがわかっています。

このメタ分析の知見から学べることは、力があっても、自分の思い通りに進まないとき、怒り表情が生じないようにする、あるいは、怒り表情と誤認識されやすい熟考表情をするとき、「考えているので、猶予が欲しい」というメッセージを明確に示すようにする。こうしたことに気をつけることで、信頼関係を損なわず、誤解を回避し、将来の交渉機会を失わずに済むでしょう。

同じことが、力のない交渉者にも言えます。それは、力のない交渉者が、交渉中に怒りを表出する、あるいは、熟考が怒り表情と誤解されることで、目の前の交渉だけでなく、将来の交渉機会まで失ってしまう可能性が高まるからです。

理性中心と考えられるビジネス交渉の場でも、自身の感情を顧みて、表情をコントロールすることが大切だということがわかります。

次に、自分の表情ではなく、交渉相手の表情と交渉結果の関係を考えます。

結論から先に書きます。交渉相手の表情を識別する能力が高いほど、売買交渉における売り手は、利得を高めることができ、採用面接における面接官は、利得のパイを広げ、応募者とWin-Winの関係を築くことができる、ということがロールプレイによる実験からわかっています。

売買交渉の実験をすると…

最初に、売買交渉の実験を紹介します。実験参加者を架空の商品の売り手と買い手にわけます。交渉項目は、商品の価格、商品の輸送時期、商品に対する支払い時期、商品を取り付けるための工事要件の4つです。

これら項目から得られる利得は条件によって決まっており、一方が得をすれば一方は同じだけ損をするもの(例えば、商品の価格。売り手はなるべく高く売りたく、買い手はなるべく安く買いたい)、双方が同じ利得を共有できるもの、2つの項目の中で1つの項目は一方においてより重要であり、もう1つの項目はもう一方においてより重要であるもの、と設定されています。

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