感情表現で交渉や面接の結果を有益に変える方法 人間の話し合いは理性以外の要素も大きい
東洋経済オンライン / 2024年3月14日 10時30分
売り手も買い手も、4項目についてなるべく多くの利得を得ることを目的にしています。この目的のもと、同意できる条件を探り、交渉します。交渉後、条件に応じて得られる利得が決まります。
また、交渉後、参加者の表情認識力を計測します。参加者に、42枚の表情写真を観てもらい、怒り・恐怖・嫌悪・幸福・中立・悲しみ・驚きの中から適切だと思う感情を選択してもらいます。正解数に応じて、表情認識力がわかります。
実験の結果、表情認識力の高い売り手は、交渉相手と協力し効率的に自身の利得を得ることができ、さらにより大きな割合の利得を得ることができたことがわかりました。買い手にも類似の現象がみられたものの、統計的には有意ではありませんでした。
本実験結果を、現実の交渉実務経験から捉えると、次のように考えることができると思います。
顧客よりも商品について熟知している営業員は、顧客のさまざまな表情を捉え、そこから顧客の欲求を推測し、欲求に応じて、商品情報やセールスポイントの出し方を変える。一方、売り上げの低い営業員は、潜在顧客の変化に関心を向けられず、決まり文句をただ話している。
顧客の表情から、もっとその情報を「聞きたい」という感情がわかれば、カスタムメイドの商品の説明ができるというわけです。意識、無意識問わず、優秀な営業員が実践しているのは、まさにこうしたことなのだと思います。
表情認識力がWin-Winを導く?
次に、採用面接の実験を紹介したいと思います。実験参加者を架空の会社のリクルーターと応募者にわけます。給与、休暇日数、引っ越し費用の払い戻しなど労働契約の8つの項目について、なるべく多くの利得を獲得できるよう交渉してもらいます。参加者は、実験協力金に加え、交渉の成績に応じて、賞金がもらえます。
この交渉に先立ち、参加者の①一般認知能力(GMA:理解力や論理的思考力などの知性を表す)、②情動知能(EI:心の知能指数とも呼ばれ、感情認識、感情促進、感情理解、感情マネジメントから構成される)、③感情認識能力を計測しておきます。
実験の結果、一般認知能力は、交渉結果に関連がないことがわかりました。一方、リクルーターの感情認識能力及び情動知能の感情理解のスコアが高ければ高いほど、リクルーター及び応募者の合算した利得は高まり、応募者の個人利得を高めることがわかりました。また、感情認識能力は、情動知能よりも一貫してこの結果を予測することがわかりました。
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