イオン、24年問題対応を超えた「物流改革」構想 物流責任者が次世代物流構想のすべてを語った
東洋経済オンライン / 2024年3月14日 7時50分
物流2024年問題が迫っている。「働き方改革関連法」による残業時間規制強化が4月からトラックドライバーにも適用されることで、荷物の未配や遅配、運賃高騰などが懸念されている。
物流問題は2024年以降も深刻化が予想されており、荷主の危機意識は強い。たとえばスーパー業界では各地で研究会が立ち上がり、競合同士が手を取り合う協業に発展している(詳しくはこちら)。国内流通2強の一角、イオンは物流危機にどう立ち向かうのか。同社で物流を統括する手塚大輔執行役に聞いた。
ーー「物流2024年問題」が迫っています。
国の試算では日本全体で2019年度比14.2%の輸送力が不足すると言われている。何もしなければ、お客様への転嫁を強いられるだけでなく、店舗に商品を運ぶこと自体難しくなってくるだろう。小売業は社会的なインフラ。それだけに物流問題は重大なテーマである。
車両数を5~10%削減
ーーイオンとしてどう取り組みますか。
核となるのはオペレーション変更による物量の「平準化」だ。時間と曜日の2軸で物量の波を抑えていく。
前者に効くのが「朝便」「昼便」の区分廃止だ。私自身もスーパーマーケットの経営に携わっていたからわかるが、店舗は昼よりも朝に発注量を増やしがちだ。そうすると、朝のピークに合わせて車両を用意しなければならなくなる。そこで今後は朝から昼までを一つの配送時間帯に設定し直し、納品量を分散させることで車両数を削減する。
またこれまではトラックが倉庫から出発する時間を厳格に決めていたため、荷台がスカスカなまま運行する車両も多かった。今後各トラックは時間ではなく、満載になったことを条件に出発するようにする。その分、積載率の改善が見込める。
後者については、特売商品の配送方法を変える。特売日はそれ以外の日と比べ、物量が倍程度に膨れ上がる。その分、トラックの手配にコストや手間がかかっていた。今回「特売品はその日の朝に届けるもの」という習慣を見直し、特売日の前日以前から段階的に店舗へ配送することで曜日ごとの物量の差を抑える。
いずれも、約2年前からイオン九州をはじめ地方子会社の協力の下、効果を確かめてきた施策だ。今春からはこれらを全国の3300店舗に展開することで、5~10%車両数を削減できると考えている。
ーー2030年には2019年比で34%もの輸送力が不足するという予測もあります。
まだ改善の余地はある。現在のイオンは2000年代前半に構築された物流網をいまだに使い続けている。2024年問題対応の一方で、中長期的に物流の構造全体を作り直さなければならない。2030年をターゲットにプロジェクトを進めているところだ。
「総合スーパーにとって最適な物流」から脱却
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