不正続発の大手損保は"ウミ"を出し切ったのか ビッグモーター、カルテル問題で処分も残る闇
東洋経済オンライン / 2024年3月14日 20時0分
東京海上日動火災保険の「競技・曲技等使用危険補償特約」はその1つだ。カーレースなどの競技による事故費用を補償する特約だ。事故が多いことから、その損害率は一般の自動車保険の数倍に上る。2021年の改定で保険料を10倍以上に引き上げたものの、収支は依然として赤字の状態だ。
東京海上は「収支動向を踏まえ、必要に応じてさらなる料率の引き上げを検討している」としているが、カーレースの期間だけ特約を付帯し、保険料を日割りで支払うことを容認しているため、収支の黒字化は容易ではないだろう。
では、赤字を垂れ流し続けている同特約をあえて温存させているのはなぜか。それは、「大手ディーラーの役員で、レースに参戦する人が多いからだ」と東京海上の関係者は解説する。同特約が、ディーラーの役員に恩を売り、「営業協力」する道具の一つになっているのが実態なのだという。
三井住友海上火災保険の自動車保険においても、契約者を置き去りにし、ディーラーを優遇する様子が垣間見える。
状況を理解するうえで、まず知っておきたいのが自動車保険における「長期分割」という特約の存在だ。2年や3年といった複数年で自動車保険を契約するときに付帯する特約で、単年契約より保険料を割り引くのが特徴だ。顧客にとっては、自動車保険で毎年の契約更改手続きを省けるだけでなく、事故を起こして保険金を受け取っても、契約期間中であれば複数年にわたって保険料が上がらないというメリットがある。
一方、損保にとっては、契約期間中に保険料を上げることができないため、収益性が低くなる傾向がある。ゆえに大手損保が長期分割を大々的に宣伝することはなく、できることなら廃止したいというのが本音だろう。
それでも長期分割を温存させているのは、ディーラーの意向が大きいからだ。保険代理店でもあるディーラーにとって、長期分割によって毎年の契約更改手続きなどの手間が省けるメリットは大きく、それゆえ顧客に推奨しているケースが多い。
一部の大手損保では、自動車保険全体に占める長期分割の比率が高まり、収益性が低下することを防ぐために「ディーラー以外の販路では、長期分割の比率を制限するなどしている」(大手損保幹部)という。
三井住友海上のニューロングで混乱
そうした環境で、三井住友海上が2010年に発売したのが「ニューロング」という商品だ。長期分割と同様、2年や3年の複数年契約をすることで保険料が割引になるが、事故で保険金を受け取ると契約期間中でも保険料が上がる仕組みになっている。
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