中学受験が「早く通い始めた者勝ち」ではない理由 低学年のうちは「広い意味での勉強」がおすすめ
東洋経済オンライン / 2024年3月16日 8時30分
誤解5 第一志望に合格できるのは3人に1人
5つめは、第一志望に合格できるのは3人に1人という割合についての誤解です。
「第一志望に合格できるのは3人に1人」というのが定説です。多くの子が第一志望にするような学校の倍率が、だいたい2~4倍なので、そこから割り出された数字です。
でも第一志望に合格できる確率は、じつはもっと少ないのです。最終的に組んだ受験プランで、実際に受験する複数の学校の中の第一志望に合格するのは3人に1人くらいでしょう。でも、それはあくまで「最終的に」という話です。
中学受験勉強を始める前は、有名な学校にあこがれますよね?「有名大学の付属中に入れたらいいな」などと理想を思い描いて、中学受験塾に入塾するわけです。その理想の学校が本来の「第一志望」といえます。
でも、小5、小6と進級し、何回も模試を受けるにつれて、現実がわかってきます。そして小6の11月頃、どの学校をどんな順番で受けるかという受験プランを組むことになったときに、直近の模試の偏差値より10も20も上の学校や、過去問を解いても合格最低点に数十点も差がある学校は、受かるのは厳しいだろうと悟り、合格する可能性がある「現実的な」第一志望校を定めることになります。
その「現実的な」第一志望校に合格できるのが、3人に1人というわけです。入塾前に思い描いていた当初の第一志望には、3人に1人どころか、5人に1人、いや10人に1人くらいしか合格できていないはずです。
第一志望に合格することだけがすべてではない
大手塾のマーケティング戦略は「うちの塾に入って、指導力のある講師の指導を受けて、塾生たちと切磋琢磨すれば、子どもは成長を遂げて、夢に見た学校にも手が届く」という希望を与えるものです。それは、あながちウソではありません。
小4で入塾してきたときは、消極的でいつも小さな声で話していたのに、小5、小6と成長していくに従って、自信がついて堂々とした態度になり、別人のような頼もしさを見せるようになって、誰もが羨む学校に合格して進学する……というような子も、何人も見てきました。
第一志望校に3人に1人の合格。10人に1人の合格。見方を変えれば、3人に1人でも10人に1人でも、合格している人がいるということです。
合格している人がいる以上、わが子も合格する側に入れるともいえます。
ただし私は、第一志望の学校に進学することよりも、第二志望や第三志望に進学することで、人生が不利になるとは思いません。どんな進路に進んでも、その環境でしか得られないことが必ずあります。長い人生を歩む中で、あのときにこの道を進んだからこそ、本当にやりたかったことができたと振り返ることが、あるはずです。
向上心を持って第一志望をめざすことはお子さんの成長につながりますが、その結果、第一志望に進めなくても、「残念でした」ということはないはずです。どんな結果も、それをどう今後に生かすかで、その進路の価値が決まります。
受験勉強を通じて、そんなしなやかさも学んでいくことができたら、人生を豊かに歩めるのではないでしょうか。
■ 早くから入塾しても、そのぶん成績が上がるとは限らない。
■ 両親ともに中学受験経験がなくても大丈夫。
■ 経験者こそ、時代が変わっていることに要注意。
■ 塾は名前で選ばず、子ども本人に合いそうかを最優先にする。
■ 本来の「第一志望」に合格できるのは3人に1人より少ない。
西村 創:教育・受験指導専門家
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