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地球外生命体「火星より木星で発見」期待高い根拠 天文学者が語る太陽系最大の惑星の知られざる姿

東洋経済オンライン / 2024年3月17日 15時0分

エウロパ表面では弱いながらも太陽光が届くことで氷が蒸発し、水蒸気ができます。この水蒸気を木星から放たれる強力な放射線が分解することで、酸素が生み出されているのです。

この酸素が氷の層をくぐり抜けて地下の海まで届くなら、生命存在の可能性は高まります。テキサス大学のマーク・ヘッセさんたちの研究チームは、エウロパ表面の氷の循環をコンピュータシミュレーションで詳しく調べました。(※)

エウロパには氷の裂け目のような地形(カオス地形)が広がっている場所があります。研究者たちは、エウロパの氷が部分的に解けて塩水となり、大気中の酸素と混ざり合う地域でカオス地形が作られると考えています。

(※)Hesse, M. A., Jordan, J. S., Vance, S. D. et al. Downward Oxidant Transport Through Europa's Ice Shell by Density-Driven Brine Percolation Geophysical Research Letters,Volume 49, Issue 5, article id.e2021GL095416

コンピュータシミュレーションでは、酸素を取り込んだ塩水がひとかたまりになって氷の中に沈んでいく様子が示されました。エウロパの氷は厚さ20kmほどあると推定されていますが、およそ2万年かけて酸素入りの塩水が氷の中を沈んでいくのです。

研究者たちによればこの酸素の輸送はとても効率がよく、地上で取り込まれた酸素の86%が地下の海まで運ばれるとのこと。現在までに地下に運ばれた酸素の総量の推定は簡単ではないようですが、もっとも大きな見積もりでは、エウロパの海に持ち込まれる酸素の量は現在の地球の海の酸素量と同程度になる可能性があるそうです。

これは、酸素に支えられた生態系が地下海に存在する、という期待を高めてくれる結果です。とはいえ、これは推定される最大値の話なので、実際にどれくらいの酸素が運ばれたのかはさらなる研究を待つ必要があります。

NASAのエウロパ・クリッパーは2024年に打ち上げ予定で、エウロパに近づくのは2030年。エウロパをより近くから調べることで、表面に存在する物質の組成や地形が手に取るようにわかるはず。

エウロパでの生命存在の可能性を探る、決定的なヒントをもたらしてくれるかもしれません。驚きの報告が届くのを、ゆっくり待つことにしましょう。

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