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「大量閉店」イトーヨーカ堂の運命を握る店の正体 時代の流れには勝てなかった総合スーパーの転機

東洋経済オンライン / 2024年3月17日 7時30分

また、この会社の大高善興会長は、セブン&アイのプライベートブランド「セブンプレミアム」の生みの親としても知られており、ベニマルの食品に関する知見はグループの宝なのである。

惣菜工場、プロセスセンターについても、かなり昔から戦力化に成功しているため、イトーヨーカ堂のプロセスセンター、セントラルキッチンに関しても、ベニマルからのノウハウ移転が実施されている。ヨーカ堂が食品で生きていく、と明言できるのは、この優秀なグループ企業がいるからなのだろう。

イトーヨーカ堂の運命を決める「SIPストア」

2月終わりに新型ミニスーパー「SIPストア」が千葉県松戸市内にオープンし、ニュースなどでも取り上げられていた。セブン‐イレブンが開発、運営しているため、生鮮の充実した大きいコンビニという紹介をされていたがが、これは機能としては明らかに小型食品スーパーだ。

セブン‐イレブンの永松文彦社長は、「SIPストアで店舗数を拡大していくつもりはなく、得られた知見やノウハウを平準店舗に共有していく」という趣旨の発言をしていた。

つまり、難易度の高い生鮮管理を伴うこの店を、フランチャイズ制を根幹とするコンビニの店舗として拡大していくのは、加盟店の意向を無視して進めることはできない、ということだと解釈する。セブン‐イレブンでもなく、ヨーカ堂でもない、セブン&アイの新たな食品スーパー業態が、始動しつつあると考えたほうがいいのかもしれない。

食品スーパーは小売業の中でも最も人件費がかかる業態であり、人手不足、人件費高騰という昨今の環境変化に大きな影響を受けている。生鮮パック詰めや惣菜製造などを店舗ごとのバックヤードで行っていることが要因だ。こうした店舗オペレーションを標準としてきたやり方はこれから維持できなくなる。

そんな時代の要請に対して、セブン&アイはヨーカ堂の危機を契機として、プロセスセンター、セントラルキッチンを活用した生産性の高い業態開発に舵を切った。いわば、なんとか時代の要請に間に合った、という段階なのだろう。

リストラによって収益を改善したヨーカ堂に、新たな時代にあわせた新型スーパーが加わるのなら、セブン&アイのスーパーストア事業としての成長戦略を描くことはできる。ヨーカ堂、という名前が残っていくかどうかは別にしても、グループを総動員すればスーパーストア事業を再成長させる経営資源がこのグループにはある、ということだ。この世にまだ1店舗しか存在してないSIPストア業態の成否が、今後のイトーヨーカ堂の運命を決めるといっても過言ではない。

中井 彰人:流通アナリスト

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