1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

爆速成長を続ける台湾発AI企業「エイピア」の正体 日本で2021年上場、台湾人CEOはハーバード博士

東洋経済オンライン / 2024年3月18日 7時30分

消費者の「迷い」をAIで分析するサービスもある。消費者がどの内容を見て手を止めたのか、どんなスクロールをしたのかなどをAIが分析し、購入を悩んでいると判断した消費者には「割引クーポン」などを表示して購入を促す仕組みだ。

日本向けの顧客はEC(ネット通販)、ゲーム事業者が中心だ。有価証券報告書によると、販売代理店としてサイバーエージェントを介して導入する企業が多いとみられる。近年は、アメリカなどアジア以外でも事業を広げている。2023年12月期は、アメリカやEMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)の売上収益が前期比84%増と急伸した。

エイピアがアメリカに進出したのは4年前。ユー氏は「AIやデジタルマーケティングの分野で成熟するアメリカ市場への進出は実験的な位置づけだったが、非常に販売活動がうまくいっている」と手応えを口にする。

AI技術に魅了された学生時代

ユー氏はそのアメリカで2000年代に、機械学習や自律制御の分野でアルゴリズムを研究するAI科学者として実績を積んだ経歴を持つ。なぜ、起業家に転向し、マーケティングを事業領域に選んだのか。

ユー氏がAIの研究を始めたのは、国立台湾大の学生時代に、AIで人間の顔を認識する技術に魅了されたのがきっかけだった。

兵役期間も暇を見つけては大量の論文を読み漁るほど熱中し、さらなる学びを求めて渡米を決める。スタンフォード大でAI研究の権威であるアンドリュー・エン氏に従事し、AIを使った四足歩行ロボットや車の自動運転の研究を進めていった。エン氏はOpenAIのサム・アルトマンCEOの師としても知られている。

博士課程を過ごしたハーバード大では理論を深め、研究を成功に導くパターンもわかってきた。周囲から研究者として評価が高まる一方、ユー氏はAI技術を実用化に結びつける限界も感じていた。自分の仕事は、実際に社会に役立つものではなく、「博物館に飾られるようなもの」だと。

起業を思い立つきっかけになったのは、ある日、車のハンドルを握って運転している時のことだった。長く自動運転を研究してきたのに、「まだこうして自分で車を運転しているじゃないかと、ふと気がついた。AIを使って実際に世の中にインパクトを与える仕事がしたいと考えるようになった」(ユー氏)。

アメリカで研究生活を送っていた台湾出身の仲間とともに、2010年頃からビジネスを始めた。もっとも、AIで起業するといっても、当時は今のようなAIブームが訪れるはるか前。「AIは技術としてはあっても、それをどこにどう使っていいかわからなかった」という。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください