「ひとり言」は脳の衰えを防ぐ簡単にできる対策だ 長期記憶と「言葉に出す」ことの深い関係とは
東洋経済オンライン / 2024年3月19日 18時0分
言葉には、不思議な力があります。「自分は○○だ」、「自分〇〇できる」といった自己規定の言葉を発したとたんに、不思議に自分自身がその方向に向かっていくようになります。
なんだか地味で、暗い感じがするかもしれない「ひとり言」ですが、実はさまざまな効用があり、奥が深いものだといえます。
では、何をどのようにつぶやくと、効果が出るのか? 脳内科医の加藤俊徳氏の新刊『なぜうまくいく人は「ひとり言」が多いのか?』をもとに、脳と言葉のメカニズムを脳科学的な視点から解き明かし、上手にひとり言と向き合うことで、自分の能力を高める方法を3回に渡り解説します。
直感的に出たひとり言を大事にする
右脳の直感的なひとり言を、頭ごなしに「否定」することは禁物ですが、「検証」することはひとり言の事実化には必要不可欠です。
手前みそになりますが、私がfNIRSという新しい脳機能の計測法を発見、開発したとき、「これは従来の技術であるfMRIを超える」と直感しました。
ただし、それと同時に、「本当にそうか?」という問題提起と、それを検証するひとり言をつぶやいていたことも確かでした。
問題提起や検証することは、左脳的な作業になります。具体的に実験を繰り返しながら、fNIRSの有用性を検証していきました。
私はfMRIを学ぶためにアメリカのミネソタ大学に渡り、その道のパイオニアである恩師らに学んだわけですが、学ぶ機会を与えてもらった恩に報いるためにも、発見したfNIRSの完成度を上げなくてはならないと考え、試行錯誤していました。
そんなとき、「押してダメなら、引いてみな」という言葉が脳裡に浮かび、自分のfNIRSの技術そのものを疑って、検証し始めました。
ひとり言ノートをつけてみる
話は逸れますが、私はいつしか「ひとり言ノート」を作り、そのときにひらめいた言葉などを書きつけるようになりました。あえてひとり言を生み出すために、ノートを持参してカフェに行くこともありました。
ミネソタ大学と自宅の途中にあるダン・ブロス・コーヒーに行くと、ひとり言が出やすいので頻繁に通いました。以来、旅をしたり、街を歩くときは、ひとり言が出やすい“ひらめきカフェ”を探す癖がつきました。
そして2022年、fNIRSの発見から31年目に、脳機能を定量する技術を完成させて、国際特許と論文にまとめ、発表しました。fMRIはもちろん、従来のfNIRSでもできなかった、脳機能を頭皮上から定量的に評価できる技術を確立したのです。
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