AI技術で「人が死なない時代」が来ることの"暗雲" 診察室は無人に、誤診は限りなくゼロに近づく
東洋経済オンライン / 2024年3月19日 19時0分
「センシング」の進化も予防医学の普及を後押ししていきます。
センシングとはセンサーを使って、さまざまな生体情報を24時間365日計測し、数値にして可視化する技術のことです。身近なところではアップルのスマートウォッチがその代表格です。いまや、iPhone 本体もセンシング装置を兼ねつつあります。
センシングの研究がさらに進めば、思いもよらない生体情報が健康維持や病気の早期発見の指標として使われる可能性があります。自宅や職場にもセンサーが付けられ、食事、入浴、仕事など日常生活のさまざまな場面から得られたデータを分析して、健康維持のアドバイスをしてくれるのがあたりまえの風景になるかもしれません。
未来の診察室は、センシング専用の部屋となる可能性もあります。そこに「人間医師」はいません。
患者さんが入室したと同時にセンサーが体温や顔色などを測定して、患者さんの状態を自動で把握できるようになります。採血はまだ看護師さんがしてくれていますが、数十年後には診察室に入るだけで、わざわざ血を採らなくても血液の状態がわかり、異常を検知できるようになるでしょう。
すでに血糖値を継続して自動的に測るセンシングデバイスは実用化されていますから、不可能なことではありません。
センシング専用の診察室では、人間医師に代わって「AI医師」が診断をしてくれます。「AI診断」の進歩も致死的な病気を減らし、私たちの健康寿命を延ばすことに寄与するでしょう。
現在は人間の医師が患者さんを診察して、病状の把握や治療方針の決定を行う診断のプロセスを担っています。
ただし、人間は誰でも間違いを起こす可能性があります。医師もそうです。診断を間違ってしまったら、どんな薬や治療も無意味になってしまいます。
AIなら肉体的・精神的疲労もない
AI診断なら、ありとあらゆる病気の情報を網羅したデータベースを患者さんの基本情報や病状、検査データと照合して、誤診を最小限にすることができます。勘違いや思い込み、肉体的疲労、精神的疲労もないため、人間より安定した正確な診断ができます。
診断のスピードも人間はAIにかないません。AIは過去の症例や論文といった膨大なデータを短時間で学ぶことができますし、情報の抽出や照会も瞬時にできます。
AIによる診断は、2023年の論文に記載されている乳がんの診断の正確さの比較でも人間医師と同等の正確さを示しており、実力的には「追いつき」「追い越す」状況が見て取れます。
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