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大阪メトロ中央線「20系」は何が特別だったのか 引退直前、検車場での「最後の月検査」に密着

東洋経済オンライン / 2024年3月20日 6時30分

「それまでの車両はカム軸で抵抗器を切り替える抵抗制御が中心で、カム軸を回すモーターや接点のメンテナンスが必要でした。VVVFインバータ制御は電子制御ですので稼働部や接点がなく、整備そのものは非常に楽になりました。ただ、抵抗制御とVVVFインバータ制御では検査や整備の方法が全く異なるため、最初のうちは日々勉強でした」(谷口さん)

20系は運転操作面でも大きな変化をもたらした。直接的には、それまで左右方向に動かす方式が主流だったマスコンハンドルとブレーキハンドルが前後方向に動かす方式となったが、それ以外にもさまざまな違いがあったという。

「たとえば、それまで中央線を走っていた30系や50系は抵抗制御車両のため、発車の際に『カム合わせ』という操作が必要でした。自動車に例えると半クラッチのような操作なのですが、VVVFインバータ制御車両ではこれが不要となりました。また、20系は御堂筋線用の10系と同様、停車直前に電気ブレーキから空気ブレーキに切り替わるのですが、そのタイミングやクセをつかむのに苦労したと、運転士から聞いています」(谷口さん)

ほかにも、車両を立ち上げる(電源が落ちた状態から運転可能な状態にする)際や、逆に泊車(電源を落として留置状態にする)の際は、3種類のスイッチを2カ所で操作しなければならなかったのが、20系では1つのスイッチを1カ所で操作すればよくなったという。

1984年に第1編成デビュー

20系の第1編成は約9カ月にわたる試験を経て、1984年12月に営業運転を開始。翌1985年には量産車4編成が製造され、中央線に投入された。同線は同年4月に深江橋―長田間が延伸開業したほか、編成両数が4両から6両へと増強されており、20系の増備はそれらによる車両不足を補う意味合いもあった。

その後、1989年には11編成が追加で製造された。このうち中央線に投入されたのは2編成で、残る9編成は30番代に区分され、谷町線へ。両線の旧型車を置き換えた。

「中央線用と谷町線用で、走行性能に違いはありません。前面や側面帯の色が路線によって違うほか、無線機器などが路線ごとの仕様になっているくらいです」と、同じく森之宮検車場の大谷内圭介さん。大谷内さんも一時期、20系の制御器検査を担当していたという。

こうして、20系は6両編成16本という陣容になったが、1990年以降の増備は新20系へと移行した。新20系は製造コストを下げられるステンレス製車体とし、車体デザインも大幅に変更。技術の進歩に伴い、制御装置もより新しい世代のものとなったが、基本仕様は20系と同じである。

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