横浜線直通計画もあった「みなとみらい線」秘話 2024年で開業20年、距離は短いが工事は難航
東洋経済オンライン / 2024年3月22日 6時30分
みなとみらい線の建設は、同じく六大事業に含まれていた市営地下鉄の建設計画に端を発する。当初計画では、市営地下鉄3号線は本牧―関内駅―桜木町駅―横浜駅―新横浜駅―勝田(港北ニュータウン)を結ぶものとされた。だが、1976年9月に横浜―関内間が開業(同時点で1号線は上永谷―関内まで開業)した後、関内以遠の区間は、地下鉄工事にともなう国道の渋滞発生が懸念されることを理由に、港湾業界から運輸省に工事着手の延期を求める陳情が提出されるなどし、工事が保留されていた。
その間にみなとみらい21地区の開発がいよいよ具体化し、輸送需要が見込まれるようになる中、1985年7月の運輸政策審議会答申第7号に、東神奈川駅からみなとみらい21地区を経由して元町付近(山下町)に至る「みなとみらい21線」が、早期に新設すべき区間として盛り込まれたのである。
同時に元町から本牧経由、根岸線の根岸駅までが、今後、建設を検討すべき区間とされ、市営地下鉄3号線の関内―山下町間はみなとみらい線と重複することになったため、調整の結果、後に建設を断念した。
ここで注目すべき点は、路線の起点が東神奈川駅になっていることだ。当初、みなとみらい線は国鉄(現・JR)横浜線との直通を念頭に計画されたのである。
だが、当時は1987年の国鉄民営化を直後に控え、財政面に課題を抱えた国鉄はそれどころではない状況に置かれていた。
そこで浮上したのが、東急東横線との直通運転だった。しかし、横浜駅には京急、相鉄という他の私鉄も乗り入れているが、なぜ東急になったのか。それにはいくつかの理由が挙げられるが、まず鉄道輸送面に着目すると、横浜―桜木町間の輸送密度の低さと、東横線横浜駅(地上2階にプラットホームがあった)の拡張性の低さがあった。
当時、渋谷方面から電車に乗り、横浜駅に到着するとほとんどの乗客が降りてしまい、横浜―桜木町間は、乗客もまばらだった。また、構内にカーブもある横浜駅プラットホームは上下線とも手狭で、しかも造作物の一部が国鉄線路上にはみ出しているような状況にあり、乗降客がさらに増えた場合の拡張の余地は、ほぼゼロだった。
東急「みなとみらい進出の足がかりに」
さらに東急グループ全体で見れば、新たな商圏に自社ブランドで進出する足がかりになるというメリットがあった。東急はみなとみらい21地区に社有地がなかったため、当初はこのエリアをあまり重視していなかったようである。だが、みなとみらい線への乗り入れが横浜市から打診されたのを契機に、積極姿勢に転換した。『東急100年史』(2023年9月発行)には、当時の五島昇社長の言葉が記されている。
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