父倒れ一人になったタイ出身・女子高生の旅立ち 大阪ミナミ「外国ルーツの少女」の成長【後編】
東洋経済オンライン / 2024年3月23日 19時0分
私は母親と妹弟3人とのシングルマザー家庭に育った。そして私が20歳の冬、母親はがんで亡くなった。葬儀の手配、役所の手続き、銀行口座の整理、学費免除の申請……、悲嘆に暮れる暇もないほど、やるべき事が目の前に山積した。
生活が急変するなかで支えになったのは、幼いころから通っていたプロテスタント教会のコミュニティだった。特に中学生のころから世話になってきた牧師夫妻は、私たちきょうだいを親身になって支えてくれた。
夫妻の家で、私はしばしば夕食をごちそうになった。その食卓は私にとって、胸の中で膨らむ不安を言葉にし、ただ話を聞いてもらうことで、自分は独りではないと実感できる、かけがえのない「普通」の時間だった。
もちろんメイと私の置かれた状況は全く違うし、メイが本当にそれを求めていたのかもわからない。ただ、自分にできることは、それくらいしかなかった。「メイに何かしてあげたい」という意気込みが私にはあった。
けれど、そんな私の意気込みは、いつの間にか流れて消えていた。
私にとっても、妻にとっても、メイが週に一度うちに来ることは純粋な楽しみになっていたからだ。うれしい報告も、たまりにたまった愚痴も、冗談交じりに明るく語るメイと接していると、私も妻もただ楽しかった。
当時ブームになり始めていた漫画「鬼滅の刃」の存在も、流行語「ぴえん」や「JK(女子高校生)」の正しい使い方も、現役女子高校生のメイが私たち中年夫婦に教えてくれた。
メイは食卓で話しながら、時折こらえきれずに涙をこぼした。それでもじきに気を持ち直して笑顔を見せようとする姿に、こちらが励まされていた。
高校卒業後の進路
父親が自宅に戻れないまま、メイは高校3年生になり、受験の年を迎えた。「助産師になる」という夢の実現に向け、まずは看護師の資格を取るための専門学校を目標にすえた。
Minamiこども教室で受験支援の中心を担ったのは、高校の化学教師を退職してボランティアに加わったタナカさんだった。皮肉のきいた冗談は多いが、子どもへの愛情にあふれたおじさんだ。
メイの苦手教科は化学と数学。高3レベルの理系科目を教えられるスタッフは限られ、タナカさんがつきっきりで課題をみた。
3年生の夏になると志望校も固まった。私も新聞記者の端くれなので、メイの小論文や志望理由書を添削したり、面接の練習に付き合ったりした。志望理由書には「将来、助産師になりたいと考えているからです」としっかり書いた。
この記事に関連するニュース
-
「べつに、学校じゃなくていい」親子で読みたい、不登校の子の居場所を描く小説『学校に行かない僕の学校』発売!
PR TIMES / 2024年5月10日 17時15分
-
家族3人で「ファストフードは1000円まで」…手取り19万円で小学生2人を育てるシングルマザーが涙を流すワケ
プレジデントオンライン / 2024年5月8日 16時15分
-
紗衣は眞栄田郷敦“遥斗”に助けられた高校生!? その行動に多くの反応集まる…「366日」5話
cinemacafe.net / 2024年5月7日 11時10分
-
看護学校相次ぐ閉校 少子化・大学志向加速 地域医療に影響も
産経ニュース / 2024年4月29日 8時0分
-
今の学校にこそ「ハリー・ポッター」のような"異界"が必要だ…「不登校30万人」の日本の学校に欠けているもの
プレジデントオンライン / 2024年4月22日 9時15分
ランキング
-
1ダイドー「樽缶コーヒー」終売の噂が拡散 担当者「終売の予定はございません」
ねとらぼ / 2024年5月12日 16時47分
-
2メルカリ歴10年の専門家が「実際に売れて驚いたもの」3選 思った以上に高値で売れたものも紹介
Fav-Log by ITmedia / 2024年5月11日 11時15分
-
3“激安焼肉食べ放題店”の元店員が暴露。「客に“得させないようにする”3つのワナ」
日刊SPA! / 2024年5月8日 15時54分
-
4「料理に水道水をそのまま使う人」が多い都道府県は? 全国的には約6割が「そのまま使用」
オールアバウト / 2024年5月12日 11時50分
-
5「5年間の"ポイ活"で645万獲得」主婦の驚く稼ぎ方 稼いだポイントで家族旅行して家もゲット!
東洋経済オンライン / 2024年5月12日 12時0分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください