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父倒れ一人になったタイ出身・女子高生の旅立ち 大阪ミナミ「外国ルーツの少女」の成長【後編】

東洋経済オンライン / 2024年3月23日 19時0分

相談できるから、ひとりで抱え込まんで済む。そのおかげで心の余裕ができたと思う」

「教室はメイにとってどういう場所?」というありきたりな質問を、私は投げかけた。メイには高校1年の時にも同じ質問をしたことがあった。当時の答えは「自分ががんばりたいと思った時、応援してくれる人がいて、勇気づけられる場所」だった。

それから2年。少し考えてメイは言った。

「やっぱり居場所かな。心の居場所」

飾らない、真摯な言葉だった。

「島之内からは離れるけど、これからもみんなにいろいろ相談したいし、教室にはつながっていきたいと思ってるねん。

私のこれからの姿も見てほしいし、看護師になったら、みんなの役に立てるかもしれへんし」

そして、この間の成長を感じさせる一言を口にした。

「私のような子がおったら、自分の経験がちょっとは生かせるんちゃうかなと思ってる。しんどい思いしてる子って意外にたくさんいるやろ。見えてないだけで。

やっぱりJKはJKらしくおってほしいよね。能天気で、ふわふわしたJKライフを送れるよう、楽しいことを知ってほしい。楽しいことがあったらがんばれるから。

私の場合は、周りにいろんな大人がおってくれて、友達にも恵まれたから、いろいろあったけど、そこまで落ち込まずにJKライフもエンジョイできた。いつかは、そうやってしんどい思いをしてる子に関わっていけたらなって。それが、私の今の目標かな」

旅立ち

4月1日、メイは住み慣れた島之内を離れ、看護専門学校の寮に入った。

前々日からの引っ越し作業には、ウカイさんや私を含めた教室スタッフらが応援に駆けつけた。なかなか物を捨てられないメイに断捨離を促しながら、何とか大型バン1台に荷物を詰め切った。

荷入れの際、染み1つない寮の1人部屋に初めて足を踏み入れたメイは、心底うれしそうだった。島之内のマンションでは違和感のなかった古びた衣装ケースが、真新しい部屋に来るとやけに場違いに映った。

そのギャップこそが、メイの踏み出した「新生活」を象徴しているように、私には思えた。(おわり)

【本記事の前編、中編はこちら】

玉置 太郎:ジャーナリスト

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