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中国新興EV「蔚来汽車」、決算が映す厳しい実態 廉価版サブブランドの投入で巻き返せるか

東洋経済オンライン / 2024年3月25日 16時0分

蔚来汽車は2023年の販売台数や粗利率の実績が、投資家向けに示していた目標値に届かなかった。写真は主力車種の「ES6」(同社ウェブサイトより)

中国の新興EV(電気自動車)メーカーの蔚来汽車(NIO)は3月5日、2023年の通期決算を発表した。

【写真】蔚来汽車が2023年12月に開催したイベントに登壇した李斌CEO(同社ウェブサイトより)

同社の2023年のEV販売台数は約16万台と前年比30.7%増加したが、伸び率は2022年(34%)より低下した。通期売上高は556 億元(約1兆1604億円)と前年比12.9%増加。純損益は207億2000万元(約4325億円)の赤字を計上し、損失額が前年比4割超も膨らんだ。

蔚来汽車の厳しい実態を示すのが粗利益率の推移だ。自動車事業の通期の粗利益率は9.5%と、前年比4.2ポイント低下。四半期別では2023年1~3月期の5.1%を底に改善してきたものの、10~12月期の粗利率は11.9%と目標の15%に届かなかった。

従業員の1割前後を削減

それだけではない。蔚来汽車は2022年末時点で「20万台以上」としていた2023年の販売目標も、やはり未達に終わった。同社の月間販売台数は(2023年6月末に発表した実質値下げを起爆剤に)2023年7月に初の2万台超えを記録したが、その後は勢いを維持できなかった。

2023年11月には、創業者で董事長兼CEO(会長兼最高経営責任者)の李斌氏が全従業員に宛ててメールを送信。蔚来汽車の現状を次のように述べ、リストラに着手すると通告した。

「わが社の業績は目標との乖離が大きい。コスト削減と業務効率化を図り、組織を身軽にして(競合他社との)戦いに臨むため、従業員数を10%前後削減する」

蔚来汽車のメインブランドである「NIO」に関しては、2024年は新型車の投入や既存車種のフルモデルチェンジの予定がない。そんななか、同社が販売台数底上げの切り札として立ち上げるのが(廉価版の)サブブランドの「阿爾卑斯(アルプス)」だ。

「アルプスの第1号モデルは2024年後半にお披露目する。販売価格は20万~30万元(約417万~626万円)に設定し、2024年10~12月期に納車を開始する」。李氏は決算説明会で、アルプス・ブランドの今後の展開についてそう述べた。

李氏の説明によれば、NIOブランドとアルプス・ブランドは明確に差別化される。NIOがハイエンドのブランドとして利益率を重視するのに対し、アルプスは利益率よりも量を売ることを優先するという。

車載電池の自社生産を断念

なお、李氏は2023年12月に開催した蔚来汽車のイベントでアルプスに言及し、販売目標について「1車種で月間5~6万台」と語った。

中国のEV最大手の比亜迪(BYD)は、車載電池から完成車まで自社で開発・生産する「垂直統合型」のビジネスモデルにより、価格競争力と利益確保を両立させている。蔚来汽車はそれを模倣し、アルプス・ブランドに自社製の車載電池を搭載する計画だった。

しかし同社は、(業績悪化などを受けて)この計画の見直しを余儀なくされた。電池事業の採算性を再評価した結果、3年以内の利益率改善が見込めないと判断。電池セルや電池パックの研究開発は続けるが、生産は他社に委託するとしている。

(財新記者:余聡)
※原文の配信は3月6日

財新 Biz&Tech

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