キヤノンの「トップ技術者」はセンサー開発の35歳 「超高感度SPADセンサー」誕生の経緯は?
東洋経済オンライン / 2024年3月26日 8時0分
現地ではSPADに適した回路の設計思想をいちばん学びました。SPADでは電気信号が増幅される時、瞬間的に電流が増えます。これをうまく制御しないと期待通りの性能が出ません。
電気信号を好き勝手に増幅させるとものすごく大きな電流が発生し、消費電力が増えてしまう。とくに画素数を増やした場合、すべての画素で信号の増幅が起こり、とてつもなく大きな電流になる。そうすると発熱も起こり、イメージセンサーとして使い物になりません。
業界のスタンダードになりつつある
増幅する電気信号を制御しながら、しっかりと精度よく光の粒をとらえる、という大きな設計思想を学んで帰り、キヤノン独自の回路に昇華して製品化することができました。
SPADでは他社が論文などで採用していない方式を真っ先にキヤノンが採用し、それが業界のスタンダードになりつつあります。キヤノンは世界の中でも進んだことをやっていると思います。
──超高感度カメラとその肝となるSPADセンサーの開発は、社内制度や社風がうまく生きた事例ですね。
私が学生だった頃、キヤノンの人事の方から「キヤノンでは、自ら手を挙げる人にチャンスを与える。そういう会社だ」と言われました。
若手でも、自ら手を挙げて、しっかり勉強して、筋の通った説明をすればチャンスを与えてくれる。本当にその通りだったと感じています。
他社がやってないことをやりよりよい性能を出していくことは、キヤノンが組織としてこだわっている部分で、すごくいいなと思います。
最近は技術者以外の方々とも接点ができるようになりました。技術に近いところでいうと、知財や法務の方々が高い専門性を持ってサポートしてくれているおかげで、自分たちは時間ができて、技術を磨くことができています。
例えば海外留学をした際にも、大学とキヤノンの間で共同研究をする場合には契約をどうするのか、知的財産をどう扱うのか、といったところでサポートしてもらいました。
若手のモチベーションになれば
──「トップ・サイエンティスト」として会社から期待をかけられています。どう感じていますか。
まずは、全力で期待に応えたい。プレッシャーもあるが、楽しく夢を見ながら、頑張って期待に応えたい。
個人的にはトップ・サイエンティストの認証はありがたく思っています。社内的に知ってもらうことによってサポートが受けやすくなっている面もあるかもしれません。
これからも制度が広がって、若手の技術者のモチベーションになっていったらいいなと思います。私自身も若手の目標になれるような技術者になっていきたいです。
吉野 月華:東洋経済 記者
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