「客の声、反映しても売れない」悩む人に欠けた視点 購買意欲を喚起するための「インサイト」の重要性
東洋経済オンライン / 2024年3月26日 16時0分
そのうえ、人の心理は正直でもありません。そこにはしばしば「本音と建前」の二重構造があります。人は誰しも自分をよく見せたい、よく思いたい生き物ですから、認識している自分の感情と、本当の感情にはギャップができてしまいがちです。
例えば、上記の大学生が旅館を選んだ本音の感情としては「仲居さんがいたり、部屋食が出てくるような旅館に恋人と泊まるのが大人っぽくてあこがれるから」かもしれません。その深層心理には「余裕があって大人っぽい自分を恋人に対して演出したい」「甲斐性がある人だと思われたい」という願望があるのかもしれません。
あるいは、恋人をちょっといいレストランに連れて行くとき、顧客は「美味しい食事をしたい」「恋人を喜ばせてあげたい」「思い出をつくりたい」と自分では思っています。
しかし、その潜在意識の中には「単価の高い食事をご馳走しておくことで、将来起こるかもしれないトラブルを回避したい」「自分の誕生日や記念日にはもっといいレストランに連れて行ってほしいので、それとなく期待水準を伝えたい」といったインサイトがあるかもしれません。
このように、潜在意識下に眠っている、一見ギクッとしてしまうような無自覚の願望が、人を消費行動に駆り立てるのです。インサイトとは、潜在意識下にドロドロと存在する感情や願望を、消費行動として顕在化させるための噴出口のようなもの、ともいえます。
インサイト(insight)の直訳が「洞察・発見」であるように、「この行動をする人々の中にはこのようなインサイトがあるのではないか?」という仮説をもって洞察し、見抜いていくことが重要になってきます。
インサイトは、一見「ニーズ」と似ているように見えますが、似て非なる概念です。ニーズが、消費者自身が自覚している欲求そのものであるのに対し、インサイトはあくまでマーケターが洞察力を駆使して、ひとつの仮説として見出す「消費者が無自覚に抱いている欲求のツボ」です。
ニーズは、消費者自身が自覚している欲求なので、参考の価値はありますが、(自分をよく見せたいという心理も働くため)信憑性には疑問が残ります。一方、インサイトは行動観察や解釈を通じて得られた消費者の行動原理への仮説であり、検証を通じてその妥当性が確認されるものとなります。
「サラダマック」の失敗に学ぶ
有名な話ですが、インサイトとニーズの違いを端的に説明する事例があります。
2000年代初頭のマクドナルドでは顧客インタビューを通じて「マクドナルドは健康に悪そうだ」というイメージが持たれていることが課題となっていました。そこで、アンケートで多く寄せられていた「健康志向の高いサラダなどのメニューをラインナップに追加してほしい」という声を踏まえ、実際に野菜をたっぷり使った新メニュー『サラダマック』を発売。
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