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賃上げしても「給料安い」と憤る若者の何が問題? 経営者と従業員との間にある「情報の非対称性」

東洋経済オンライン / 2024年3月26日 10時30分

と文句を言う者もいた。また、社会保険料については会社側が社員の見えないところで半分を支払っているため、実は社員が見えている額以上に「賃上げ」は行われている。しかし、それを理解できていない若者が大半だったのである。

残念ながら、このような無理解は若者だけではなかった。調べてみると管理職も同じで、

「中小企業なんだから我慢しろよ」

と言うだけで、

「結局いくらになるのか、と思って計算したら微々たるものだった。話にならない」

と嘆く若者に対して、先輩や上司もキチンと説明できなかったのである。

社長が賃金をどのように決めているのかへの無理解

次に給与水準である。若者たちは業界における水準をまるで知らなかった。だから「十分なのか/不十分なのか」の判断ができなかった。感覚的に、

「物足りない」

と言ってしまっただけなのである。

恥ずかしながら、これは私も経験がある。私が20年以上前まで勤めていた日立製作所では、当時のシャープやソニーと比較して給料が低いという不満があった。しかし、東芝や三菱電機など、同じ総合電機メーカーと比べると決して低いものではなく、リーディングカンパニーとしての水準は保っていた。

その後、中小企業のコンサルタントになってからは、日立製作所の平均収入が実に高い水準にあったことを思い知らされた。当時の私は「井の中の蛙」だったのだ。

この企業の賃金水準も決して低いものではなく、むしろ今回の見直しによって水準以上になっていたのだ。

最後は、賃金の決定プロセスだ。これはとても重要なポイントだ。この企業は成熟ステージにあり、生産性が上がらないことが経営課題となっていた。労働生産性分析をしてみると、1人当たりの付加価値は業界平均を下回っている。したがってコンサルタントからは、

「生産性が上がってから賃上げしてはどうか」

と指導されていた。まっとうなアドバイスである。

しかし社長は、

「生産性を上げてからでは遅い。先に賃上げをするんだ。私は社員を信じたい」

と英断した。まずは労働分配率を上げることを決めたのである。専門家としては、賃上げの背景に、社長のこうした心意気があったことを社員全員が理解すべきだと思う。

なぜ若者たちは「社長に謝りたい」と言ったのか?

現代の労働環境では、「心理的安全性」が重要視されている。多様な意見を受け入れることが生産性アップに繋がると信じられているからだ。

とはいえ、正しい知識、理解がないまま発言を許すと組織が混乱する。若者たちは率直な意見を言っただけだ。しかし人事労務コンサルタントによる勉強会が開催されたあとは、誰ひとり不満を言わなくなった。講師が、

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