住宅ローンのフラット35、金利「独歩高」の忍耐期 機構が「身銭」を切り、変動金利型に対抗へ
東洋経済オンライン / 2024年3月26日 7時10分
機構が発行するMBSの表面利率は、2022年の秋口までは0.5%前後で推移していたが、2022年末には1%を突破。2024年3月発行分は1.14%にまで上がっている。資金調達費用が上昇した分はフラット35の金利に転嫁せざるを得ず、競争の激しい変動金利型との差は広がる一方だ。
フラット35の退潮は、金融機関側にも対応を迫る。主要取扱金融機関であるSBIアルヒは、2023年8月に変動金利型の新たな住宅ローン商品を投入した。同社の融資実行件数は近年落ち込んでおり、変動金利型の商品で埋め合わせたい考えだ。
こうした「フラット離れ」を、機構も指をくわえて見ているわけではない。2022年秋には、機構の発行するMBSの利率が上昇したにもかかわらず、フラット35の金利をむしろ引き下げた。自らの利ザヤを削って、金利上昇の影響を抑える動きだ。
新商品投入だが「時間稼ぎ」との側面も
そして2024年2月、機構が満を持して投入したのが「フラット35子育てプラス」だ。子育て世帯を対象に金利を優遇する新商品で、子どもの人数が多かったり、省エネ住宅の取得や地方移住などの条件を満たしたりすると、借り入れ時から5年間、金利が最大で1%下がる。
変動金利型にも対抗できる優遇幅が奏功してか、機構によれば、子育てプラスの投入後、フラット35の利用件数は回復基調にあるという。
とはいえ、大胆な金利優遇は両刃の剣でもある。子育てプラスによる金利優遇の原資としては、2023年11月に成立した補正予算で国から約15億円が拠出される。ただし全額が賄われるわけではなく、一部は機構の持ち出しとなる。「(子育てプラスは)いつまでも続けられる施策ではない」(機構幹部)とし、予算が尽きた時点で受け付けを終了する。
新商品は子育て世帯の住宅取得支援という意味合いに加えて、長短金利差が縮むまでの「時間稼ぎ」との側面もにじむ。2024年も、機構にとって我慢の年となりそうだ。
一井 純:東洋経済 記者
-
- 1
- 2
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
マイナス金利解除でも住宅ローンの負担は限定的? フラット35は長期金利が上がる前に契約したほうがお得?
ファイナンシャルフィールド / 2024年5月10日 8時40分
-
マイナス金利政策解除で〈変動金利神話〉崩壊か…「住宅ローン」で損する前に知りたい金利「7つの型」それぞれが持つメリット・デメリットを徹底解説
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月30日 17時15分
-
銀行が苦悩「上げられない住宅ローンの変動金利」 客離れ懸念、融資手数料の「負の側面」が顕在化
東洋経済オンライン / 2024年4月24日 5時0分
-
銀行が苦悩「上げられない住宅ローンの変動金利」 客離れ懸念、融資手数料の「負の側面」が顕在化
東洋経済オンライン / 2024年4月23日 7時0分
-
団信に落ちた場合の選択肢の一つとしても…金融機関によって金利や事務手数料は違う? 借りる人の条件は?〈フラット35〉に関するQ&A
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月20日 11時15分
ランキング
-
1消えゆく「回転レストラン」…80年代には全国50店→再開発・老朽化で数店舗に
読売新聞 / 2024年5月18日 15時0分
-
2農林中金が1兆円規模の増資検討…米金利高で外債の含み損拡大、5000億円赤字の見通し
読売新聞 / 2024年5月18日 23時10分
-
3「定年コロリ」という言葉も…長年のシフト勤務が〈睡眠の質〉や体に及ぼす影響は?【スタンフォード大教授が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月18日 17時15分
-
4東京から新幹線…「新神戸」よりも、一駅先の「西明石」まで買った方がおトク!? JR往復割引「601キロ」のカラクリ
まいどなニュース / 2024年5月19日 8時2分
-
5“スーパー化”するドラッグストア 野菜や肉・魚のほか店内調理のパンや総菜も並ぶ 専門家「男性顧客も視野に入れて食品を強化か」
MBSニュース / 2024年5月18日 13時20分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください